論題
ディベートチャンピオンシップ2008-裏戦
「日本は裁判員制度を廃止すべし」
2008年12月
廃止側:井上 晋
存続側:中村貴裕
【試合結果】:廃止側勝利
■廃止側立論
廃止する理由を、以下の2点とした
1 正しい裁判が行われなくなる
事実の認定を
① 口頭にて ②素人裁判官が行う
2 負担がかかる
時間的負担・・・ 短くて3日、もめれば9日~10日
心理的負担・・・ 死刑制度がある
大きな哲学こそないが、シンプルに2点にまとめた。言葉の定義など丁寧に論証した点が評価できる。
■存続側立論
<哲学>
国民の民主主義を成熟させる制度 司法に対する民主主義の導入
※民主主義とは以下の3点
①ひとりひとり国家権力行使
②チェック&バランス 透明性
③チェック機能を担う
トクビル
国政への参加
司法参画 自己本位と闘う
G8で導入していないのは日本だけ
<反論>
正しい裁判とは
多種多様な経験 ひとりのプロが必ずいる(死刑の場合)
負担を軽減している
数か月 → 三日で終わる プロをいれている(陪審制とのちがい)
民主主義という大きな哲学を掲げ、その定義をしっかり掲げた。だが、それがこの論題にどのように機能し、どんな問題を解決するのか。国民にどう影響するのかがわかりづらかった。廃止側への反論は丁寧に行われていた。
■否定側反駁~肯定側反駁
トクビルや東大OL事件の例を持って、現行の裁判の問題点をあげようとする存続側(中村)に対し、廃止側(井上)は、忘却曲線を使って科学的に論証。口頭での審議は効果がなく正当性がないことを強調。具体性のある廃止側優勢に進む。
■存続側最終弁論~廃止側最終弁論
国際社会に必要なのは民主主義であるとする存続側であるが、廃止側(井上)の「裁判員導入前の裁判で民主主義においてなにか問題がおきているのか?」という問いは、この試合を象徴する決定打になったであろう。
■総評
裁判員制度を廃止すべき理由を、国民レベルの実態論で論証した廃止側(井上)に対し、民主主義の成熟というおおきな概念論(観念)で対抗した存続側(中村)だが、あまりに抽象的な論に終わった感がある。
廃止側は、口頭による裁判の弊害(緻密性の欠如)、負担の増大を論証したが、これに対する反論は議論のすり替えになっており、廃止側の論証が通った形となった。存続側は、民主主義の導入という哲学は評価できるが、トクビルの引用や、東大OL事件の例の用い方と「民主主義」という概念を証明するにはあまりにも小さすぎたといえるだろう。
廃止側の尋問で、「未必の故意とは何ですか?」という質問に、存続側(中村)がたじろいだシーンが印象的であった。反駁以降、その勢いに堂々たるプレゼンテーションが重みを増し、朱の羽織はかまの井上が勝利を勝ち取った試合であった。