論題
ディベートチャンピオンシップ チャレンジャー決定戦
「論題:日本はタバコを1箱千円に値上げすべし」
2008年12月
肯定側:井上晋
否定側:奥山真
【試合結果】:肯定側勝利
肯定側は、タバコは健康被害を及ぼし、そのコストは国民全体で負担する。また、税収アップも期待できるとする。 一方の否定側は、1000円に値上げすることによって闇タバコが発生する危険性を指摘、タバコと健康被害には直接の因果関係はないと反論する展開。 健康被害VS闇タバコの構図となったが、論の重要性に差があり、否定側は苦しい展開となった。
■肯定側立論
<哲学>
愛煙家・喫煙家のひとは、自己責任において社会にも責任を取っていただきたい。
<現状分析1>
国民保険料をはじめとして社会に負担をかけながら非常に安価でタバコを手にいれている
<現状分析2>
タバコと健康について
2005年 タバコ規制枠組み条約
さまざまな機関で健康被害が発表されている
発がん率 15~30倍
その結果としてタバコは社会的損失も生んでいる
七兆三千億円のコスト負担
もはや喫煙は個人の趣味嗜好の問題ではなくて
社会的問題になっている
日本は国民皆保険制度をしいている
これらの医療費は国民全体で負担しなければならない
◇原因
煙草の価格 主要国の3分の1~5分の1
日本はトップレベルの喫煙率
◇プラン
1000円に値上げし、活用方法は以下の3点
1 社会保障の負担
2 不正の取り締まり
3 禁煙の補助
◇メリット1
税収アップ
奈良女子大教授の試算 5.9兆円の税収アップ
◇メリット2
健康になれる
平成15年 JTの調査
6割以上が辞めたいと言っている
そのきっかけを与えてくれる
■否定側尋問
タバコと健康の因果関係があるかどうかについてつめていく
→ 易学は統計学なので、因果関係は証明できないとの回答を引き出す
■否定側立論
<哲学>
人類の旧来の友であるタバコへの迫害は日本の社会に大きな混乱をもたらす
日本には400年以上のタバコの歴史があるやめようと思ってもなかなかやめられなかった
<問題点(デメリット)>
闇タバコが蔓延する。イギリスで20%の不正タバコ。日本でも暴力団があり、麻薬と同様に扱われる。
<肯定側への反論(矛盾)>
1 平均寿命が世界一
2 喫煙率が下がっているのに、肺がんは増えている
3 不公平税制 3回も値上げ
4 税収は増えない(やくざにながれる)
5 消費量はかわらない→社会保障費は減らない
■肯定側尋問
欧州で喫煙率が下がっていることは、タバコが健康に良くないことを認めさせる。また、肯定側の反論のベースであった、喫煙率と肺がんの相関関係の矛盾をうまくついたような形となった。
■否定側反駁
闇タバコの存在について強調。イギリス・カナダの例をとって説明。 また、健康については、肺がん発生率は5倍と言っているが、0.1%と0.5%ではインパクトはそれほどない。
■肯定側反駁
肺がんのインパクトが少ないというが、これは命の問題。 改めて、禁煙によるガン発生率の減少(効果)を説明。 増税の根拠は ニコチン依存症の管理料に社会保険料から徴収される よって、タバコを吸う人からそれをとるのは理にかなっている。
■否定側最終弁論
400年続いた歴史が物語るのはタバコの有効性 肯定側への反論、疫学というのは差があることしか証明できない。 闇タバコが蔓延し、タバコ消費量が減らない、社会コストも減らない 青少年の育成にも問題。
■肯定側最終弁論
健康について、相手の論を受けた上で、科学的に論証された健康被害ゆえにタバコはやめるべきであることを訴える。そのうえで吸いたい人は対価を払って吸えばよいという(社会的責任を負う)論で締めくくった。
■総評
この論題は、もともと健康に有害であるといわれるタバコを千円に値上げすることで、喫煙者が減少するのか? 税収はどうなるのか?という論点があった。
肯定側は、この問題は社会全体がコスト負担をしている(7兆3千億円)大変重大な問題としてクローズアップ。安価に入手できる日本、1000円に値上げすることで税収アップし健康被害や禁煙促進に利用できる、さらに禁煙者の増加については健康面でメリットがあるとした。 これに対し、否定側は、闇タバコの存在(社会悪)という一点で勝負に出た。さらに、肯定側の反論には、健康とタバコに因果関係はない(疫学では証明できない)とした。 闇タバコについては諸外国の例を用いながら、規制がかかれば闇ができることを主張するが、それがこの論題のインパクトとして「千円の値上げ」を阻止するには弱い(関連性が薄い)と言わざるを得ない。 400年のタバコの歴史という観点はよいが、それであればその「永年の人間の権利(趣味嗜好)」を国が値上げという事実上の規制をすることへの是非を論じたほうが、わかりやすかったのではと思う。 あるいは、千円に値上げすることでどれだけの禁煙者がでるのか、禁煙者がふえれば結局税収はそれほど増えないのでは(論証メカニズムの矛盾を突く)ないかという反論もできたのではと思う。
肯定側は、禁煙者が増え税収があがるという前提で(否定から反論なし)社会的コストの抑制、健康によい影響を与える、吸いたい人は自分で負担して吸うということを終始一貫わかりやすく論じており、相手の反論も受けながら、そしてうまくかわしながら訴えていた。落ち着いたパフォーマンスも観衆の理解を深めた。
タバコの健康被害(周辺への2次被害)はやはり変えがたい事実、それにまさる否定のデメリットがだせず、闇タバコ(未知数)にこだわりすぎた感あり。千円値上げで喫煙者が減り税収があがるというメカニズムも崩せず。
よって、肯定側・井上晋の勝利。