BM ディベートマニアⅤ 全体講評
論題
「論題1:昔の恋人の写真 捨てる?捨てない?」
「論題2:NHKは民放化すべし。是か非か?」
講評:中村貴裕
快晴の下、ピンと張り詰めた空気、やや肌寒くなった11月19日(土)、 国立オリンピック記念青少年センター(以下コクリツ)でディベートマニアⅤは行われ た。 TV業界へのディベート進出を果たしたBM2005の総決算、 この日は2つのタイトルマッチの開催だ。
まずはSemi Final BurningとしてBMディベートキング選手権試合。 2005年8月20日にディベートキングとなった久保田浩に対し、2005年のレギュラー ディベートでレギュラーバトル勝率No1の奥山真がチャレンジャーとして挑む。 BM内でも屈指のライバル関係である久保田と奥山のシングル決戦。 久保田がキング初防衛となるのか、チャレンジャーは3ヶ月天下(キング)とさせてしまうのか? 論題は、TVディベートでも採用された「昔の恋人の写真、捨てる? 捨てない?」。
そしてMain Burningとして BMディベートマニア選手権試合。 言わずと知れたBMディベートのタッグマッチ頂点決戦。 9月から始まったファイナルランブルで勝ち上がった2チーム 「Vインパクト」と「ヒロッスィング・アクターズ・スクール」]が 社会人ディベートの最高峰の座をかけてをかけて争う。特にディベートマニアⅤは、ディベートマニアⅣで優勝し4連覇を達成した後、 全タイトルを返上しチーフディベートインストラクターとして後継者の指導・育成に あたっていた太田龍樹がBMの大会に帰ってくる注目の大会。 VインパクトのVはVictoryだけでなく5連覇のファイブ「Ⅴ」をかけた言葉。 都度パートナーを変えての出場で、無傷の5連覇を達成できるのか。 対するは、久保田浩、高澤拓志のダブルヒロシペア、ヒロッスィング・アクターズ・ スクール。 舞台では自分を捨ててアクターになりきる、この準備を徹底的に行ってきた。 論題は、「NHKは民放化すべし、是か非か」。
1週間前の両チームの意気込みビデオが紹介されると、 ヒロッスィング・アクターズ・スクールのキャプテン久保田が放った言葉は、 「11月19日は運命の日になる。それは、太田龍樹の不敗神話が崩れる日。」 壮絶なる戦いの火蓋が切って落とされた。
【Semi final Burning 捨てる側 久保田浩 vs 捨てない側 奥山真】
「論題:昔の恋人の写真、捨てる?捨てない?」
2003年3月15日の巌流島決戦での死闘以来、まさに名勝負数え唄第6章。BM内で自他共に認めるライバル対決が、 今回はキングの座をかけてコクリツの舞台で行われる。 通算成績は3勝2敗で奥山、しかし今回はキングの座をかけて、奥山が久保田にチャレ ンジャーとして挑戦する。
8月20日にコクリツの舞台でキングの称号を得た久保田にとって、この日でちょうど 3ヶ月。 冷静沈着。相手の話を矛盾点を、論理の久保田は、太田の存在しない間のキングは絶対 に守りきるという。どの世界にも3ヶ月目には試練があるというが、キング久保田はその座を防衛する事 ができるのか。
チャレンジャー奥山真は、2005年のレギュラーバトルで勝率No1。 ただし過去2回の大舞台では、連続初戦敗退し、大舞台での勝負弱さが最近の課題。 反省点は「背伸びした」事。自分の力以上のものを出そうとして、自分のよさが出せ なかった。
大切なのは 自らの率直な力を知り、背伸びせずにその力を出し切る事。 今回は、自然体で臨むべく、 スーツでなく私服で登場した。
「捨てる」側になったキング久保田は、昔の恋人写真を持ち続ける事で生まれる「執 着心」が自分にとってもパートナーにとっても、今後の恋愛の妨げになると主張。「捨てない」側のチャレンジャー奥山は、過去の写真を捨てずに「過去の恋愛を受け 入れる」事が人間的魅力のアップになると主張。 客観的データが非常に少ない論題に苦労しながら、様々な文献の引用と自らの経験論 も含めて展開していく。
オーディエンス(来場頂いた方)に100%分を委ねた判定結果は、64対42という僅差で、 キング久保田の勝利。 BMディベートとして初めて取り扱った恋愛論だが、キング久保田のディベーターとし ての幅広さを見せる試合ともなった。
【Main Burning 肯定側 V-インパクト vs. 否定側 ヒロッスィンク゛・アクタース゛・スクール】
「論題:NHKは民放化すべし。是か非か?」
これまでのBMディベートマニアで都度パートナーを変えながら2001年から4大会を連覇している太田龍樹。
優勝の最有力候補ではあるものの、2004年にディベートマニアⅣで優勝し4連覇を達成した後、 全タイトルを返上しチーフディベートインストラクターとして後継者の指導・育成に あたっており、ディベート実践からは遠ざかっている。 ここで、指名したパートナーは、2005年レギュラーディベートで4勝6敗の中西夏雄。 2002年に中西がBMに入った最初のディベート以来、3年ぶりに組むと言う。太田はマニアのタイトルを捨てて指導を重視したのか、いや、そうではない。 TVディベートにて、「魅せるディベート」の大切さを学んだ太田は、 ディベートの勝ち負けの数だけでなく、ディベート中のパフォーマンス力、尋問や反駁での即興力、 そしてBMホームページのデザイン力、大会MCでの展開力等、中西の総合的な「魅せる」センスを買って、 史上最高のタッグを作りにいったのだ。 誰にも、マニアの座は譲れない。
対戦するのはヒロッスィング・アクターズ・スクール。 これまでのやりかたを踏襲していては 太田が率いるチームに勝てない。 自分を変えるべく、アクターズスクールを設立し、「アクター(俳優)」として これまでの自分と異なる自分になりきり、それを部分で演じきろう、と二人で誓っ た。
「ヒロッスィング」という言葉は、プロレスラー小川 直也が取り入れた肉体改造法「ファスティ ング」を意識した言葉。 大会初出場の高澤は、アキレス腱断絶状態から肉体改造に取り組んできたが、 今回はダブルヒロシが、チームとしてディベート改造に取り組み仕上げてきた。 舞台でアクターになりきる事ができるのか。 11月19日は運命の日となる。その運命とは、5連覇達成か、 不敗神話が崩れる瞬間&キングとマニアの両称号を持つニューヒーローの登場か。 最高潮の熱気の中、ディベーターが入場してくる。 キングの防衛を果たし、波にのる久保田浩率を先頭に皆を見渡しながら 堂々と入ってきたヒロッスィング・アクターズ・スクールに対し、 タイガーマスクの仮面をかぶって会場を沸かせて入場してきたVインパクト。 試合は、Vインパクトが肯定側となり、太田の立論から始まった。
肯定側は、人口減少と罰則の無い受信料不払システムの現状、NHKの存続じたいが危 うくなる点や質が低下する民放放送等の問題を提起した上でNHKの民放化こそ、日本の民主主義の向上に 繋がると主張。 否定側は 現状の公共放送と商業放送の二元化の現システムが、商業放送に一元化さ れてしまい、受信者となる国民の情報格差が生じる点や、これまで商業放送を担っていた民放の業 務が圧迫されると主張。
尋問での激しいやりとり、反駁の攻防含め、一進一退の試合となったが、最終弁論で日本の国民、NHK、民放、のそれぞれの観点から民放化するメリットをわ かりやすく総括した 肯定側の完勝となった。 大観衆の前で2005年最高の試合を舞台で見せてくれた両ディベーターに大きな拍手を 送りたい。 そして、5連覇を達成し2006年以降のBM代表を務める太田の挨拶、「より社会・教育業界に進出していく」というBMの今後に、ぜひ期待して欲しい!