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2018.10.8(月)
第62回 「杉田水脈と新潮45から考える生産性」(2018年10月8日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第62回

新潮社が『新潮45』の休刊を発表しました。

既に発行部数の減少が続いており厳しい状況であったものの、杉田水脈議員の論文及びその擁護記事が決め手になったことに間違いはないでしょう。

杉田議員の論文もその擁護論文もひどいもので弁護される余地はないものです。
一方で、「生産性」という言葉を使うこと自体が問題視されている今の論調は少し違和感を覚えます。

今回は、「生産性」について考えてみたいともいます。

会社勤めの人も自営業の人も、日々仕事をしている中で、「生産性」を大切にしていることは疑いようの無い事実です。
商談の席で度々でてくる「その費用対効果は?」という問いも、「一定の投資に対して、どの程度のリターンがあるのか」という投資の「生産性」を重要視している問です。

数年前に流行った「○○ハック」なるビジネス本も、労働生産性を高めるためのノウハウ本でしたし、「コスパ高いね」という表現も、投入したお金に対する効果が高いか低いかを基準にしており、これも「生産性」が高いことが良いことという考え方に基づいています。

ことこのように、私たちは日々「生産性」という価値観を大切にしているにも関わらず、対人間となると急に「生産性」=「悪」として切り捨ててしまうことに私は違和感を感じています。
「血肉が通った暖かい、感情のある人間に生産性という言葉を使うのは非常識だ。」という意見は心情的に分からなくもないのですが、思考停止に陥っているとも思います。

我々が真に議論しなければならないことは、人に対して「生産性」という尺度を用いないということではなく、「LGBT(性的少数者)をはじめとしたマイノリティーや障害者が社会活動を行うことは決して「生産性」を低くしているわけではない。逆に高めている。」という視点ではないかと思うのです。

今回の問題で使われている「生産性」とは、単に「短期的な効率性」のことを指しておりそのことで、議論すべき土俵をずらしてしまっているように思います。
我々の社会は「生産性」の考え方を見直す時期に来ているにもかかわらず、それがしっかりと行えていない、というのがこの問題の奥底にある問題なのではないでしょうか。

工場の生産ラインのような画一的システムの中でエラーなく遅延なく、歩留まりなく同じものを作り続けることが生産性が高いというのであれば、生産性=短期的な効率性でよいと思います。
しかしながら、いま求められているのは、一度良しとして組み立てられた生産ラインそのものを「スクラッチ&ビルド」する勢いで見直すことではないでしょうか。
これまで「よい」と思っていたものを根底から疑ってみることから始める改善ではないでしょうか。(ディベートでは、批判的傾聴といいます。)
その必要性に真に気が付いた時、私たちは多様性のもたらす「生産性=イノベーションが生まれやすい社会風土」の重要性に気が付くのではないかと思います。

多様性を受け入れることを単にヒューマニティーや寛容性の問題だけにするのではなく、シビアな生産性の話題として受けとめると偽善ではない議論が生まれるのではないかと思います。

皆さんはどう思いますか。

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