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2018.7.5(木)
第60回 「働き方改革とコンプライアンス」(2018年7月5日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第60回

6月最終週、兜町界隈は忙しくなります。
いわゆる株主総会の集中週間となり、各社が一斉に株主総会を開催します。
横並び大好きな日本の経済界はこの非効率というか、茶番に対して膨大な労力をかけているわけです。そして、中身も非常に似通って見えます。

今年のテーマは、各社、「AI」、「コンプライアンス」、「働き方改革」のオンパレードでした。

「今年の総会どうするよ」
「今年の流行りどうなってる?」
「やっぱり、コンプライアンスだよね」
「おっいいね、それ入れとこ!」

というわけでもないでしょうが、中身の伴わない号令だけの改革が、ますます日本の競争力を削いでいるように感じます。

例えば、「働き方改革」。
今の厳しい労働環境が改善されるようなイメージが先行していますが、実態はかなりかけ離れています。

この改革を本気で行うには、今の業務をすべて棚卸し、無駄を見つけ出し、組織や仕事の進め方そのものを作り直す必要があります。
しかし、それを行うには、相応な努力と痛み(一部の人員は現在の仕事が無くなる)を伴いますが、そこまで行える(自己改革できる)組織は少数です。
実態としては、各企業のエース人材や本当に時間の無い中厳しい業務をこなしている人は「働き方改革チーム」に召集されることは無く、あまり仕事をしない方々が集まって実行プランを考えてることが多いとか。
その為か、現在多くの企業で行われているのは、単に残業時間を削るという「現状からの引き算」の活動です。
改善無く引き算をすれば、縮小していくのは当たり前です。

例えば、「コンプライアンス」。
近年の企業不祥事を受けてのコンプライアンス強化はよくわかるのですが、ここでも発想が「引き算」であるように思います。

本来コンプライアンスとは、「紳士たれ」ということです。法律的な規範はもとより、人として恥ずかしくない行動をとりなさい、というものです。日本の古くからの商売の教えでいえば、「三方よし」の考え方を貫きなさいということ。つまり、「買い手にとっても売り手にとっても、そして世間にとっても良いことをしなさい」というものです。
しかし現状は、善い行いを増やす改善ではなく、NGな行いを禁止するルールと仕組みを作ることに躍起になっています。
良い行動をとることではなく、問題が起きた時に「ルールを作っており、実行しています」と言い訳するための活動のように思えます。

多くの人は、「メールにパスワードをかけて送ることは、確かに誤送信を防ぐことの一助になっていると思うが、無駄が多いのでは、、、」などと感じながらも、
おおっぴらに「このような無駄は無くしましょう」とも言えずに日々大量のメールと添付ファイルの処理に忙殺されているのではないでしょうか。

ちなみに、電子メールの添付ファイルにパスワードをかけて、別のメールでパスワードを送るというのは、日本の企業以外ではあまりおこなわれていないそうです。
合理性が無い、非効率ということで取りやめられているのです。

この引き算のコンプライアンスによって増えた無駄な業務を整理することなく無慈悲に削られる働く時間のなかで、日本企業は「死に体」に成っているのではないでしょうか。

働き方を改革するのであれば、そもそも何のために働くのか、生きていくことと働くことの関係はどうあるべきなのか、といった本質的な問いに答えなければ、単なる引き算になってしまいます。つまり働き方改革はぼほ生き方改革としてとらえないと、答えは見えてきません。

コンプライアンス=法令順守というレベル認識では、やはり、法律的な防衛策にとどまってしまいます。商売はどのようにあるべきか、とか、公正であることはどういうことか言ったことが考えられるべきです。

特定の宗教による経典を持たない多くの日本人は、この厳しい問いを常に自分に問い続けないと形式的な問題にながされ、忙殺されていくのかもしれません。

皆さんはどう思いますか。


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