2015.8.29.(土)
第26回 「談話の聞こえ方」(2015年8月29日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第26回
内外で注目されていた、戦後70年談話(安倍談話)が発表されました。
談話の発表から1週間以上が経過し、談話に対する様々な解釈がすでに出尽くしているので、このコラムでは、「談話の聞こえ方」について取り上げてみたいと思います。
今回の談話は、このコラムでも4月11日に取り上げていましたので、私も気になっていました。
残念ながら、ライブで見ることができなかったため、まずはWebで全文を読むことに。
戦後70年談話(安倍談話)
一読した感想は、
「おー、なかなか」というものでした。
国内外の様々な要望や圧力を考えるに、安倍首相が伝えたかったことは全て盛り込めないだろうと思っていましたが、それでもらしさを感じさせる文章だと思いましたし、談話の後半にあたる未来志向の表現は共感できるものだと感じました。
あくる日の夕方、通勤電車のなかでたまたまYouTubeで談話の動画を見つけ、これはと拝見しました。質疑まで合わせて約40分の動画です。
前日の好印象を持ったままこの動画を見たのですが、開始5分で混乱に陥りました。
安倍首相が話されていることが全く頭に入ってこないのです。
さらに言えば、まったく心に響かないのです。
文章の内容は前日に読んでおり、理解しているはずなのになぜこのようなことが起きるのか?
様々な要因があると思いますが、3つほどあげたいと思います。
・読み言葉の原稿である
この談話は、後々何度も多くの方に読まれることを意識して、読み言葉で書かれているのではないでしょうか。読んでわかりやすい文章と聞いてわかりやすい文章は明確に異なります。
・棒読みになっている
安倍首相は、プロンプター(首相の両脇にある、原稿を表示する機械)を睨み付けながら、同じテンポで淡々と原稿を「読んでいる」。そこには、抑揚もなければ、魂のこもった心の声もありませんでした。しかも、その日の首相はとてもに滑舌が悪く、聞き取りづらいものでした。
プロンプターを読むために目が泳いでいる、間違えずに読むことに注意集中し、滑舌すら悪くなる。
これだけで、集中して聴くことが困難になります。
・本心でない
これは、上記の2つともかかわってくる一番の原因と思いますが、安倍首相が自らの談話として伝えたかったことの半分も出せていなかったため、どうしても言葉に心がこもらなかったのだと思います。
質疑応答の時間にそれは、顕著に表れます。質疑に対する回答も、原稿を読んでいるのが見え見えという状況なのですが、そのなかで、「21世紀構想懇談会」を連発しています。質問の度に、「21世紀構想懇談会では、、」と続きます。何よりも驚いたのは、首相本人の歴史観を問われた際も、「21世紀構想懇談会での議論をふまえ、」としているところです。とても不思議な光景でした。
人間、何を伝えるにも、腹の底から信じている内容を話すのとそうでないのとでは、説得力が全く異なってくるものなのだと、改めて痛感しました。
非常に重要かつ繊細な内容を含んだ談話ということが、上記のような理由を生み、分かりづらさにつながっていると理解しましたが、もうすこしご自身の言葉で、伝える(発表するではなく)ことを心がけてほしいと感じました。
また、週刊誌の報道ではありませんが、「首相は本当に体調悪いんじゃなかろうか」とも不安になってしまう談話でした。
皆さんは、どう思われますか?