2014.12.12.(金)
第17回 「人は、褒めて伸ばすか、叱って伸ばすか?」(2014年12月12日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第17回
アベノミクスによる経済効果が争点として選挙戦が進んでいますが、
庶民の生活には、いまひとつ元気が戻っていないように感じます。
経済の仕組みを変えることで景気を良くすることも重要ですが、
働く人一人一人の能力が上がらなければ、景気も本当によくはならないはず。
そこで今回の論題は、ずばり
「人は、褒めて伸ばすか、叱って伸ばすか?」
マネージメントの世界の永遠のテーマにアプローチしてみたいと思います。
まずは、「褒める派」から。
自然科学研究機構生理学研究所と名古屋工業大学の研究グループの研究によると、運動トレーニングを行った際に他人から褒められると、“上手”に運動技能を取得できることを科学的に証明したそうです。
詳しくはこちら
http://www.nips.ac.jp/contents/…/entry/2012/11/post-223.html
なんでも、他人に褒められると金銭報酬を得たときと同じように脳の線条体が活発に働くとのこと。
脳科学の世界でも、「褒めること」の有用性が証明されてきているようです。
また、山本五十六の
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』
は、教育訓としてはあまりにも有名です。
世相もあって、褒める派はかなり優勢に思います。
では、「叱る派」を見てみましょう。
この主張の多くは経験則からきているものが多いように思います。
「自分も、諸先輩方に厳しく叱られながら育ってきた」
「あの時の悔しい気持ちが成長や頑張りの糧になった」
というものです。
私自身にも経験があります。
人格を否定されるほどに程にボコボコにやられると、それはそれは辛いのですが、
新しい価値や自分に不足しているものを見つけられ、自分を大きく変えるきっかけになります。
科学的には、PTG(ポスト・トラウマティック・グロース、外傷後成長)や、SRG(ストレス・リレーティッド・グロース、ストレス関連成長)などの研究が、これらの経験則を裏付けているようです。
PTGとは、
「人生における大きな危機的体験や非常につらく大変な出来事を経験するなかで、いろいろ心の闘い・もがきなどをふまえ、むしろ、そのつらい出来事からよい方向、成長を遂げるような方向に変化する」といったことを意味します。
その叱責に愛情があることが前提になるでしょうが、大きなストレスを克服した時に、新たな世界が見えるのだと思います。
叱られる事とは、少し異なりますが、松下幸之助は若くして健康を害していますし、スティーブジョブズは、自分の作ったアップルを追い出された後に、大きな成長を遂げています。
大きなストレスは人を飛躍させるチャンスにもなっています。
信頼関係のある上席者がこのようなストレスを、「叱る」という行動で作ってあげることは重要なように思います。
また、褒められて動く人は、褒められないと動けなくなるという研究結果もあり、自発的な行動力には結びつかない(常に他人に褒めてもらえないと動けない)という研究結果も出ているようです。
私の主観ですが、そこに愛情と信頼があれば、
強度な叱責も必要なのだと思います。
皆さんはどう思われますか?