2014.11.19.(水)
第16回 「日本は、カーシェアリングを推進すべし」(2014年11月19日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第16回
景気の腰折れが懸念される中、消費税の値上げは延期され政界は選挙ムード一色になってきました。
日本の経済は、大手企業の業績が改善する一方で個人消費が伸び悩んでいます。
政府は消費を増やすことに躍起になっているようですが、
「消費は良いこと」という発想は見直す時期に来ているのかもしれません。
そこで今回の論題は、ずばり
「日本は、カーシェアリングを推進すべし」です。
こちらは、「使えるディベートセミナー 第13期」で扱った論題でもあります。
さて、推進側の論点として大きなものが、省エネからの環境への配慮です。
昨今の異常気象(集中豪雨なども)多くが、地球温暖化に起因しているといわれています。温暖化の大きな原因は、CO2の排出ですが、カーシェアリングをすることで無駄な車の利用を減らせるというものです。
事実、カーシェアリングのサービスに加入した会員は、73%も走行距離が削減したというデータがあります。(オリックス自動車株式会社提供データより)
また、あまり車を利用しない人にとっては、税金、保険代、駐車場代、など車にかかる固定費用の大幅な削減になります。
月に4回×5時間ほどの利用であれば、月額2-3万円の削減になるケースもあるようです。
(駐車場所有の有無、車種などで違いはありそうですが)
これらのメリットに合わせ、スマホで利用直前にすぐに予約ができるといったITの進化による利便性も、メリットの後押しをしてくれそうです。
一方でデメリットは、産業への影響が考えられます。
カーシェアリングでは、1台の車を数名でシェアするため、1台で10台分の車の所有を代替するという計算があります。
そうすると、車の販売台数は大幅に落ちることが想定されます。
自動車産業は、鉄鋼、ガラス、ゴム・プラスチック、半導体、コンピューターなどとても裾野が広い産業です。
日本では、532万人が自動車関連の仕事に従事しており、実に就業人口の8.7%。製造業人口においては、約50%という巨大産業です。
この産業にたいして真向から圧力をかける政策は、日本経済全体の足を引っ張りかねない深刻な問題です。
現政権が進めようとしている政策は、消費を刺激しようというものですが、この政策はその真逆を行きます。
思えば資本主義は所有と消費を繰り返すことがその原動力となっていますが、その結果、温暖化などの問題を生んできています。
シェアというのは、この所有をやめようという考え方になります。
個人所有を認める資本主義と認めない共産主義の戦いは、一度、資本主義の勝利で結論が出たようでしたが、行き詰まりを見せているのも事実です。
シェア(共有)というのは、この二律背反を昇華させた考え方かもしれません。
経済的な安定、発展は重要ですが、
所有するから共有するという切替の次期に来ているのかもしれません。
皆さんはどう思われますか?