2013.10.10.(木)
井上晋の「マッチョな政治といつか来た道」
第6回 「質問」について(2013年10月10日)
BURNING MIND主席講師・井上晋の『マッチョな政治といつか来た道』 第6回
消費税が2014年4月から、8%に引き上げられることが、
ほぼ確実となりました。
政権としては、大きな決断を下したことになります。
当然、メディアでも大きく取り上げられ、話題になっています。
ニュース番組や情報番組では、街角の人々にインタビューを行い、
今回の増税の意見を聞いています。
そこで、今回は「質問」について考えてみます。
まず、「質問」のもつ大切な側面について。
「質問」というと、
・知らないことを聞く
・相手の意見を聞く
ということが真っ先に思い起こされそうですが、
実は、全く違った別の側面があります。
それは、「質問をすること=考えること」
ということです。
これは、「使えるディベートセミナー」でも
取り上げている内容なのですが、
「ロジカルに考えるということは、
体系だった質問を自分に対して問える」
ということです。
考えるというと、「うーーん」と唸り声をあげて、
もしくは、瞑想するように目をつむり、
という姿が浮かびそうですが、
それは、グルグルと悩んでいるだけで、
考えていることになりません。
考えるとは、
「なぜそうなのか?」
「別のケースではどうなのか?」
「どのような背景があったのか?」
「いつからそうなったのか?」
「真の原因はなんなのか?」
などなど、テーマに対して具体的かつ
適切な質問が自分に投げかけられ、
かつ答えている状態です。
つまり、質問とは、その人の思考をコントロールする
恐ろしいほどの力を持っているということです。
さて、前置きが長くなりましたが、
本題に入りましょう。
今回の消費税増税における、街角インタビューです。
多くの質問が、
「8%に増えましたが、どう思われますか?」
「8%に増えますが、商売は大丈夫ですか?」
という質問で、
それに対する答えは
「仕方がないのはわかりますが、大変になります」
「年金生活なので、厳しいです、反対です」
「客足に影響がでます」
という回答です。
お金は大切ですし、自分の手元にたくさんあったほうが良いので、
そのように答えられるのは当然でしょう。
しかし、この先にあるのは、
不毛ともいえる世代間の負担の押し付け合いです。
ここに陥っている原因は、回答者側ではなく、
明らかに質問者側にあります。
このように聞かれれば、ほぼ全員がそう答えてしまいます。
目先のメリットやデメリットにのみ焦点を当てた質問をすれば、
答える人の思考も、
目先のことに対する回答になってしまうからです。
つまり、質問が思考を狭めていると言えます。
これは、とても怖いことです。
仮に、
「高負担高福祉の国か低負担低福祉の国、
日本人にはどちらがふさわしいと思いますか?」
「日本人全体で、国からの出費を抑えないといけません、
あなたは、どの費用を抑え国に還元できますか?」
といった質問がされたとしたら、
街角インタビューは、どのように変わるでしょうか。
インタビューに答えてくれる人は減るかもしれませんが、
これらの問いをメディアを通じて国民に問うこと、
つまり、国民の思考を広げることの方が、
重要なのではないでしょうか。
安易な質問が安易な思考を招き、それが
マスメディアに流れることで、
全体に浸透する、、、
これは、日本にとってとてもマイナスなことです。
問題の本質からブレずに、
「良いか悪いか」、「好きか嫌いか」ではなく、
「生き方」や「あり方」を問う質問を多く積み重ねたいものです。
以上