2013.9.19.(木)
井上晋の「マッチョな政治といつか来た道」
第5回 これは面白い! オリンピック招致成功をわかりやすく紐解く(2013年9月19日)
これは面白い! オリンピック招致成功をわかりやすく紐解く
BURNING MIND主席講師・井上晋の『マッチョな政治といつか来た道』 第5回
今回は、五輪招致成功の要因を
ネオ・ディベートの観点から見ていきたい。
きっかけは、
「伝え方で勝利!オリンピック東京招致プレゼン」
といった記事や、
「この度は、首相も選手も素晴らしいプレゼンテーションだった。」
「最終プレゼンテーションのスピーチが決めてだね。」
といった感想意見が多かった事に違和感を覚えたからだ。
「IOCの委員って、そんなレベル? そんな訳無いだろ~」
という違和感だ。
佐藤真海さんのスピーチも、
太田雄貴さんのスピーチも、
最終プレゼントで放映された動画も、
本当に素晴らしかった。
これらに異論をはさむつもりはない。
ただしほかに、決め手となった大切な要素があるのでは、
そこを見落としていると、2020年にしっぺ返しを食らうのでは、
と思ったから、どうしてもこのコラムで取り上げたくなった。
ネオ・ディベートではコミュニケーションを
「ロゴス:論理」
「パトス:感情、情熱」
「エートス:信頼感、人間性」
という3つの要素に分けます。
この分類で、今回の招致活動というコミュニケーションを
見てみます。
(人と人のコミュニケーションと招致活動は、
異なることは承知のうえです)
その一、「ロゴス:論理」から。
スポーツが人々に与える可能性や感動と日本の災害復興をリンクさせたり、
コンパクトな大会といったアピールは、
とてもわかりやすいコンセプトとロジックだったと思う。
しかし、イスタンブールの「イスラム圏初」、
という主張もユニークかつインパクトがあるもので、
甲乙付け難い。
ロジック=伝えている内容だけを見れば、
これだけのジャッジ差はつかないだろう。
では、コミュニケーションの三要素
その二、「パトス:感情、情熱」今回のキーワードでいえば、プレゼン力で、
本当に差が付いたのか?
他国のそれをすべて見た訳では無いが、
あのような場所に出てくるプレゼンテータ―は、
少なくとも一定レベル以上のトレーニングは受けているはず。
どうしようしようも無い人を登壇もさせないだろう。
そうなるとその差は、それ程大きなものではなく、
迷っていた人への最後の一押しと言った効果と
捉えるのが妥当ではないだろうか。
(もちろん、それが大きな票の差につながることもあるでしょう)
では、最後にコミュニケーションの三要素、
その三の、「エートス:信頼感、人間性」で見てみます。
人で言うなら「なんだかこの人信頼できる」というもの。
私は実はここが大きな要因なのではと思っています。
「日本人は、約束を守りそう」とか
「青年海外協力隊と関わった友人が、日本人イイヨって言っていた」とか
「電車の時刻正確なんだよね」とか
「日本に旅行に行ったんだけど、みんな親切だったな」とか
「日本のアニメ最高だよね」とか、、、
そんな安心感が、
ロジックで説明されたプランの実行可能性を高め、
そして、情熱的なプレゼンテーションを素直に
受け入れてもらえる素地を作ったのではないでしょうか。
ロジックも素晴らしかった、
プレゼンテーションもこれまでの
日本人のプレゼンテーションに比べるとよくできていた
しかし、最大の要因は、
前回のオリンピック以降、
私たち日本人がコツコツと積み上げてきた、
世界での信頼やブランドではなかったのか。
そして、そう受け止めたとき、
主催国の責任やとるべき行動が
見えてくるのではないでしょうか。
最期に、招致活動に奔走された
多くの方々に、心から感謝の言葉をお伝えしたいと思います。
素晴らしい機会を、
東京、日本にもたらしてくれて、
本当にありがとうございます。