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2013.6.10.(月)
井上晋の「マッチョな政治といつか来た道」
第1回 分かりやすさに潜むワナ(2013年6月10日)

第1回 分かりやすさに潜むワナ(2013年6月10日)



ほぼ月イチコラム
新連載 BURNING MIND主席講師・井上晋の『マッチョな政治といつか来た道』 第1回

大阪市の橋下市長の発言については、
すでにテレビ、雑誌、ネットで多くの意見が出されていて、いまさらの感もありますが、
このコラムでは、Neoディベートの観点から触れてみたいと思います。

橋下市長が発する言葉は、理路整然としています。
(内容の正否ではなく、話の筋道という点で)

幾分、言葉足らずな部分や論証が足りない部分はありますが、
「わかり易さ」という点では、日本の政治家の中でもトップレベルではないでしょうか。

背景には、弁護士という仕事で鍛えられた論理的な思考力や発言力があるのだと推測します。

当たり前のことですが、論理的であることは分かりやすさを生みます。

そういった意味で、橋下市長の発言は、常にわかり易さをともなっています。

さて、「論理的であること」、「分かり易いこと」を別の言葉でいうと、

それは、

「シンプルであること」、
「分類整理されていること」

といえます。

いわゆる、

「分けるから分かる」

という考え方です。

少し難しい言い方をすると、

「要素還元主義」

という考え方になります。

これは複雑な現象を、
「分析」し、単純な要素に「分割」し、
「調査」し、最後にその結果を「総合」するという手法です。

20世紀の科学を発展させた一つの基本思想です。

一方で、この思想は物事の本質を掴む際の大局観を失わせる原因にもなります。

例えば、

「体調がすぐれない」という問題を調べるために、
臓器一つ一つを取り出して、精緻に調べ上げていくとすると、
(原因や対象を細分化し分けていくと)
個々の臓器の問題は見えるかもしれません。

しかし、体調に影響しているのは一つ一つの臓器の問題だけではなく、
個々の臓器の関連性であることが多いのです。

西洋医学で治癒できない症状が東洋医学(漢方など)で治すことが出来るのは、
そのような例です。

また、肉体的な問題だけでなく、
精神的な問題も複雑に影響していることが多いのは
皆さんも実感として感じられているとおりです。

つまり、物事は複雑な中に、その意味を宿しているということです。

複雑系(Complex system)といわれるものです。

文化人類学者のグレゴリー・ベイトソンは、

「複雑なものには、いのちが宿る」

といっています。

橋下市長は、(意識してか、無意識か分かりませんが)

分かりやすさを重視するあまり、

言い換えれば、

ダイレクトな主張による国民のダイレクトな反応を
引き出そうとするあまり、

この本質を見失っているように思われるのです。

Neoディベートが大切にしなければならない「人間力」とは、
複雑系に対する論理力の弱さをも理解したうえでの、
説得力です。

我々も、日々、勉強していかなければなりません。

次回は、何をどのように、学んでいかないといけないのか?

一緒に考えてみたいと思います。

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