2017.5.12(金)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第57斬 「アウフヘーベンしようぜ2(フランス大統領選)」(2017年5月12日)
第57斬 「アウフヘーベンしようぜ2(フランス大統領選)」
2017/5/7(月)にフランス大統領選挙がおこなわれました。
マリーヌ・ル・ペン候補が敗れ、
前経済相のエマニュアル・マクロン候補が勝利!
フランスのEU離脱(FREXIT - フレグジットと読みます)は、
いったん見送られることになりそうです。
読売ONLINEなどは、「欧州分裂回避」と大喜びですが、
偏向傾向が激しい新聞が騒げば騒ぐほど、
裏読みしたくなってしまいます。(笑)
それはさておき、今回のコラムでは、
前回に引き続き弁証法の話をします。
■弁証法のおさらい
弁証法とは、
相反する概念を、
一方だけが完全と正しいと決め付けるのではなく、
統合して高めていく思考法のことです。
今回の仏大統領選挙では、
まさに、相反する価値観のぶつかり合いが繰り広げられました。
ル・ペン候補は、ナショナリズム&EU離脱派。
マクロン候補は、グローバリズム&EU回帰派。
弁証法の考え方では、双方の理念を統合し、
さらに優れた価値観・新しい次元に進化・発展させることを
目指します。それを「アウフヘーベン(止揚)」と呼びます。
■コアビタシオン
マクロン新大統領が直面する最初のハードル。
それは、「コアビタシオン」です。
※ディベートでは『参議院廃止』論題などで必ず勉強します
「コアビタシオン」を簡単に説明すると、
大統領と内閣総理大臣(=首相)の所属政党が違う、
という「ねじれ状態」のことです。
日本では首相が最高権力者ですが、
フランスでは、首相の上に、国民に選ばれた大統領がいます。
いわば、二重構造の統治形態をとっている為、
フランスの政治制度固有の問題点です。
マクロン新大統領は「アン・マルシュ」という弱小政党を
率いています。当然、議会では少数派の政党です。
もし仮に、議会の多数派を押し切って、
「アン・マルシュ」の盟友を首相に任命したとしても、
議会運営が行き詰まることは、火を見るより明らかです。
したがって、マクロン新大統領は、
他の政党(つまり、議会多数派=与党)から、
首相を任命せざるをえません。
フランスは過去に3度「コアビタシオン」を経験しています。
そのたびに、大統領は政権内部にライバルを抱え、
絶え間ない交渉を続けなくてはなりませんでした。
マクロン新政権の門出はイバラの道になりそうです。
■マクロン、辞めろ!
朝日新聞DIGITALによると、仏大統領選の翌日(5/8)に、
フランス・パリで大規模なデモがありました。
左派系の市民団体がデモを主導したようですが、
決選投票の投票率の低さを鑑みると、
国民の支持が薄い状況と言えます。
また、EUの状況ですが、
日本で報道がないのが不思議なぐらい不安定な財政状況です。
詳細は割愛しますが、ドイツ銀行の経営破たんが、
EU財政破たんの引き金を引くとの見方もあります。
議会に加えて、国民の支持基盤も脆弱、
EUもボロボロという状況では、
マクロン新大統領が『EU改革』に着手するだけでも、
相当先の話ということです。
■アウフヘーベンしようぜ!
ナショナリズムを掲げたル・ペン候補は敗れましたが、
『EUを離脱すべきか、残留すべきか?』という大きな問いを、
フランス国民に投げかけることには成功しました。
グローバリズム・ナショナリズムともに、
素晴らしい理念です。
どちらかが正しいと決めつけるものではありません。
マクロン新大統領においては、
足元の政権運営を固めるとともに、
フランス国民の民意を汲んで、
グローバリズム・ナショナリズムを超えるゴールを目指して
欲しいと思います。
フランス共和国がアウフヘーベンしていくことを、
心から願ってやみません。
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