2016.11.17(木)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第51斬 「新大統領トランプ、どこに向かう?」(2016年11月17日)
第51斬 「新大統領トランプ、どこに向かう?」
世間を揺るがせたトランプ新大統領誕生のニュース!!
マスコミ各社もトランプ報道で賑わっています。
発言の過激さばかりにフォーカスが当たってきた同氏。
アメリカ合衆国の新大統領として、どこに向かっていくのでしょうか?
ディベートでは、ある政策を導入したと仮定して、
メリット・デメリットを論じていきます。
例えば、「日本は移民を毎年20万人受け入れるべし」のような、
過去に一度も実施したことがないテーマを多く扱います。
よって、どのように近未来シミュレーションを行うのか?
という点が問題になります。
未来を予測する際に大切なアプローチ方法は、
①過去(経歴・経緯)を徹底的に洗い上げ、
②現在(事実として起こっていること)に目を向ける
ことです。
つまり、「過去」=「現在」=「未来」と繋げていくことが大切ということ。
今回のコラムでは、
新大統領トランプ氏が今後どのような政策を展開していくの?
について、ディベート式アプローチで分析していきます。
◆そもそもトランプ氏とはどんな人物なのか?
不動産王で有名なトランプ氏ですが、実は、
リアリティ型TV番組「アプレンティス」のプロデューサー兼ホスト。
2004年から2012年まで、第12シーズンまで続いた人気番組です。
アメリカは移民国家ですから、文化・価値観・宗教など多様化・複雑化しており、
番組上多くのタブー発言があります。恐らく日本の比ではありません。
番組のホスト役を務めていたトランプ氏には、
「何を、どこまで、言って良いか? 悪いか?」というバランス感覚が備わっている
と見るのが自然です。そうでなければ、8年間も続く訳がないからです。
見方を変えると、大統領選挙期間におけるトランプ発言は、支持率を意識し、
かなり極端な表現になっていたと考えるべきです。
実際、大統領当選後の発言は穏健なものに修正されています。
『ヒラリーを牢屋に入れる』 →『アメリカ国民全員の大統領になる』
『メキシコの金で国境に壁を築く』 →『フェンスに代替する可能性』
『不法移民全員を強制送還』 →『犯罪歴のある不法移民を強制送還』
◆政権移行チームには誰が?
米国大統領が変わると、ホワイトハウスの国家公務員が一新されます。
その規模なんと3,000人!!
その為、新大統領就任の際には、政権移行チームが組まれ、
大規模な組閣活動、組織化のための準備が行われます。
当然、政権移行チームの最高責任者には最重要キーマンが任命されます。
先日、次期副大統領マイク・ペンス氏が執行委員長に任命されました。
マイク・ペンス氏は現職のインディアナ州知事であり、
共和党主流派のひとり。
盟友でもある連邦下院議長ポール・ライアンは、
『ペンス氏はまさに保守の人であり、副大統領候補として最善の選択だ。
彼と私は長年の友人であるので支えていく』
と述べています。
こうした人事に、トランプ氏の現実主義者としての顔が見えてきます。
■ティーパーティー初の副大統領
次期副大統領のマイク・ペンス氏は、「ティーパーティー」関係者として、
初の副大統領になります。
「ティーパーティー」とは、日本では馴染みがありませんが、
2009年からアメリカで始まった、保守派による草の根ポピュリスト運動のことです。
もともと、ティーパーティー(TEA party)という名称は、
旧宗主国イギリスの茶法(課税)に対して、
反旗を翻した1773年のボストン茶会事件(Boston Tea Party)に由来しており、
同時にティーは、「もう税金はたくさんだ(Taxed Enough Already)」の頭文字です。
つまり、「ティーパーティー」が目指すところは、
政府の支出を小さくし、税収も引き下げるという「小さな政府」に他なりません。
オバマ政権は「大きな政府」を志向し、
福祉政策(オバマケア)や紛争介入(シリア、ウクライナ)を行ってきました。
これらの「大きな政府」型の政策に見直しが入ることが予想されます。
■「小さな政府」を目指すとどうなる?
アメリカの国家予算は約300兆円、うち軍事費は20%(60兆円)です。
『世界の警察を止める!』と宣言したトランプ氏の意向に沿って、
「在日・在韓米軍」や「軍事同盟NATO」は規模的に縮小・後退する可能性が高まりました。
共和党は伝統的に、公共投資を抑制し、税金を最小化することを志向する政党です。
公共投資(=政府による雇用創出)には抑制的になるでしょう。
雇用創出に積極的でない以上、賃金水準の低い移民を増やすことは、
トランプ氏の支持者層(白人労働階級)の反感をかいます。
したがって、公約通り、不法移民を厳しく取り締まる路線に変更はありません。
一方、日本に目を向けると、
先日、衆議院にて強行採決されたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、
トランプ氏が暗殺されない限りは、ほぼ空振りに終わると見て良いでしょう。
■正しい判断の為に
ディベートのジャッジ(判定)には様々な要素が求められますが、
私が一番大切だと思う点は、「ムードに流されない」ことです。
「空気を呼んで結論を下す」もしくは「声が大きい人の意見を採用する」
ことが常態化している企業も数多いと思います。
ですが、死活的に重要な、やり直しが効かない決定に際しては、
ムードではなく、論理的なアプローチが欠かせません。
来たるべき国民投票にむけて、ロジックを鍛えたい方、
正しい判断を下す確かな目を持ちたい方、
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