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2016.10.20(木)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第50斬 「ヒラリーとトランプ、日本にとってどちらがいいの?(トランプ編)」(2016年10月20日)

ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第50斬 「ヒラリーとトランプ、日本にとってどちらがいいの?(トランプ編)」

いよいよ、アメリカ大統領選挙まであと3週間!!
大統領候補2名による公開ディベートも2回行われましたが、
アメリカ現地での支持率はかなり接近している模様。
(なぜか、日本のメディアはヒラリー氏圧倒的有利という報道ばかりですが)
今回のコラムでは、
「もし、トランプ氏が大統領になったら?(もしトラ)」
について、ディベート的アプローチで斬っていきます。

■グローバリズム vs アメリカ・ファースト
ディベートでは常に肯定側と否定側という、相反する立場に分かれます。
そして、肯定側・否定側それぞれが、依って立つ部分を「哲学」といいます。
「哲学」とは大義名分であり、お互いに絶対に譲れない部分とも言い換えられます。
前回のコラムで書いたとおり、ヒラリー氏の依って立つ部分は、
「グローバリズム推進による国家の統合」という立場。
つまり、グローバル化を究極まで推し進め、国家主権を弱めて行くこと。
ここが最終目標・ゴールです。
一方、トランプ氏は、アメリカの国益のみを徹底的に追及する
「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」の姿勢を打ち出しています。
ヒラリー氏が移民政策を推し進めるのと対照的に、
トランプ氏は移民政策には抑制的で、アメリカという国家の枠組みを堅持する立場。
アメリカ覇権の凋落(ちょうらく)を受け止め、
今のアメリカに「世界の警察官」を務める余裕はないと明言し、
アメリカ孤立主義を推し進めていくということです。

■トランプ現象
トランプ氏といえば暴言で有名です。
米国メディアから総スカンをくらいながらも、トランプ氏は逆に支持を伸ばし、
あれよあれよという間に共和党候補を勝ち取ってしまいました。
YouTubeでアップされているトランプ氏の集会はものすごい熱気を感じます。
予備選の動員数はなんと1,400万人とも言われており、過去最大規模だそうです。
ヒラリー氏の支持基盤が富裕層(無国籍グローバル企業、国際金融業界)に対し、
トランプ氏の支持基盤は貧困層や白人中間層です。
「法と秩序を守る」ことを明言し、
警察や司法など法の執行者の立場を擁護していることから、
とりわけ、現場の警察官からは絶大な支持を得ています。
「アンドリュー・ジャクソンの再来」
これは、トランプ氏を形容する最上級の呼び名と言って良いでしょう。
アンドリュー・ジャクソンは第7代アメリカ合衆国大統領。
第二次英米戦争でアメリカの独立を守った英雄であり、
また、ウォール街(国際金融資本)と真っ向から対立し、
中央銀行をつぶしたという剛腕を持つ人物。
トランプ氏もまた、ウォール街(金融業界)批判を繰り返し、
アメリカ中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)への監査を強化する方針です。

■日本への影響(経済面)
アメリカ第一主義を掲げるトランプ政権では、以下の施策を優先すると思われます。
・自国産業の保護 →つまり、TPP廃案&関税による保護政策
・自国民の雇用確保 →つまり、移民政策の抑制
輸入品(たとえば、自動車)に対する関税強化は当然視野に入っており、
対米貿易という面では日本にはマイナスの影響が残りそうです。
また、在日米軍の駐留費用については、日本側の負担を増やす方向に進むことでしょう。
■日本への影響(安全保障面)
アメリカが世界から手を引くことで、世界は不安定な多極化に向かいそうです。
「さまざまな人を倒すのに、我々は4兆ドル(約400兆円)も使った」
と、トランプ氏は財政コスト面から、「世界の警察」を降りる正当性を示しました。
この数字には実は裏付けがあります。
ハーバード大学の調査によると、
イラクとアフガニスタンの戦争でかかった費用の合計額は4~6兆ドルに達し、
10年間にアメリカが必要とするインフラ費用と同額とのこと。
東アジアや中東への関与を弱めることが予想される為、
日本は、中国や北朝鮮の脅威に対抗して、主体的に立ち向かう必要があるということです。
ただし、移民政策については、アメリカの強制(つまり、国際社会の要請)はないでしょう。
したがって、「移民で日本が溢れかえる」ような近未来は心配しなくても良さそうです。

■まとめ
トランプ氏の哲学は「アメリカ・ファースト」ですので、
大統領当選後は、財政・法秩序・経済の立て直しを優先することになります。
その分、アメリカは世界への関与を弱めることになる為、
シリア情勢はロシアの意向に沿って進んでいくことになります。
世界が不安定な多極化に進んでいく中、
日本が日本を守るためには、
日本はアメリカ従属の外交姿勢を、
より主体的なものに変えていかなくてはなりません。
トランプ大統領誕生は激動の時代の幕開けになることでしょう。

■正しい判断の為に
ディベートのジャッジ(判定)には様々な要素が求められますが、
私が一番大切だと思う点は、「ムードに流されない」ことです。
「空気を呼んで結論を下す」もしくは「声が大きい人の意見を採用する」
ことが常態化している企業も数多いと思います。
ですが、死活的に重要な、やり直しが効かない決定に際しては、
ムードではなく、論理的なアプローチが欠かせません。
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