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2015.2.1.(日)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第28斬「大阪市の生活保護費プリペイド・カード支給への考察」(2015年2月1日)

ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第28斬 「大阪市の生活保護費プリペイド・カード支給への考察」
皆様、こんにちは。
昨年末のニュースになりますが、
2014年12月26日、大阪市長・橋下徹氏は、生活保護の生活扶助(生活費相当分)を、
一部プリペイドカードで支給するモデル事業について発表しました。
■大阪市、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給へ【大阪市会見、全文】
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000280401.html
橋下氏によれば、このモデル事業は、
希望者に対して生活扶助のうち月額3万円相当を、
プリペイドカードで支給するものとし、VISAカードブランドの加盟店で、
このチャージ額・入金額までの買い物、飲食などができるという仕組み。
半年から1年のモデル実施を通じて、
生活保護者の自立支援につながるかという点を検証していくのが狙いだという。
簡単にまとめると、「生活保護者の自立支援」というゴールの為に、
「生活扶助費をプリペイドカードで支給する」というプランを導入したいと言っています。
それでは、何が生活保護者の自立支援を妨げているのか?
会見から読み取れる問題点は以下の2点に集約できます。
◆現状の問題点
・問題点1(適切な生計管理ができていない) →単身高齢者の増加
・問題点2(無駄遣いが多い)        →ギャンブルや過度な飲酒等で生活費を浪費
ネット世論の反応は大半が賛成しているようですが、
今回のコラムでは、ネオ・ディベートの考え方で、
上記問題点が本当に解決されるのか? をみていきます。
まず、問題点1(適切な生計管理ができていない)についてですが、
原因を「単身高齢者が増えた結果」であるならば、
「老化による能力の減退」に対して、どういう対策が有効かを論じるべきです。
たとえば、高齢者向けヘルパーさんなど支援体制を拡充した方が有効です。
プリペイド・カードで実現できることは、支払一覧が入手できることぐらい。
これはレシートを集めるのと大差ありません。
続いて、問題点2(無駄遣いが多い)についてですが、
原因が「ギャンブル、飲酒」であるならば、
専門医の治療こそが根本解決への対策となります。
生活保護費の全額をプリペイド・カードによる支給に切り替えない限りは、
問題は残ってしまいます。
また、ギャンブル依存症・アルコール依存症の患者であるならば、
換金性の高い商品をプリペイド・カードで購入し、
金券ショップや質屋などで換金することも可能です。
つまり、問題点は二つとも解決されないことが分かりました。
大阪市が目指す「生活保護者の自立支援」にはつながりそうにありません。
デメリット
一方、プラン導入によるデメリットを見ていきましょう。
2015年1月8日、生活保護問題対策全国会議は、
「プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書(案)」を公開しました。
この要望書にまとめられているデメリットは以下の3点。
・デメリット1(法律違反・人権侵害)  →生活保護法31条1項(金銭給付の原則に違反)に違反
                        →プライバシー権・自己決定権(憲法13条)の侵害
・デメリット2(日常生活に著しい不便が生じる) →利用店舗が限定
・デメリット3(生活保護制度の利権化) →巨額の手数料収入がカード会社に転がり込む
とりわけデメリット3について、具体的に試算してみましょう。
大阪市発表資料によれば、平成25年度の大阪市の生活保護予算は約2,900億円。
そのうち生活扶助額は約1,000億円です。
仮に加盟店手数料を3%とした場合、カード発行元である三井住友カードには、
年間30億円の手数料収入が転がり込むことになります。
もし、大阪市から日本全国の市町村に横展開された場合、
「巨大な利権」が生まれるということはお分かり頂けるかと思います。
◆まとめ
生活保護者の立場からすれば、
大阪市が目指す「生活保護者の自立支援」が実現されないばかりか、
恒常的な人権侵害にさらされ、不便な毎日を強いられる施策と言えます。
また、国民の立場からしても、
「生活保護制度」を利用した特定企業への利益誘導が行われ、
税金が特定企業を肥やすという構図に不満を持つことになりそうです。
大阪市によるモデル事業が、本当に「生活保護者の自立支援」につながるのか?
しっかりと検証結果を注視していきたいと思います。

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