2014.11.29.(土)
アビコ青年のネオ・ディベート事件簿
File26「どうして勉強するのか?」(2014年11月29日)
本日のテーマは「どうして勉強するのか?」です。
子「なんで勉強しなきゃいけないの?」
親「“いい大学”に入るためだよ」
子「なんで“いい大学”に入らなきゃいけないの?」
親「“いい会社”に就職できるからだよ」
子「でも、学校の先生は『もう学歴社会じゃない』って言ってるよ?」
親「・・・」
きっと誰でも、一度はこんな会話をした経験があるかもしれません。私も小さい頃は勉強そっちのけで夢中に遊んでいる子どもでした。ですから、なるべく「勉強はしたくない」のが本音でした。
でも、その一方で「なんだかよく分からないけど、勉強はやったほうがいいらしい」ことも薄々分かってはいました。それで、勉強する意義を子どもなりに知りたくて、先ほどの問答を繰り返します。けれども、なかなか納得のいく答えは見つかりませんでした。
最近、この問いに素直に共感できる答えを見つけました。「『手紙屋』蛍雪篇〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜」(喜多川泰著・ディスカバー・トゥエンティワン)という書籍です。
この本は、同じ疑問を持つ女子高生と、その疑問に真摯に答える存在「手紙屋」との10通のやり取りを通じて、勉強の意味を考えていく内容です。
手紙屋は「そもそも勉強とは、一つの道具である」と言います。
例えば、忍耐力・自信を鍛えられる。脳を活性化できる。素直な心を育てられる(人から何かを学んで成長する一番の方法は、自分のこだわりを一度全部捨てて、相手からそのまま素直に受け入れることだからです)。
これは、サッカーに置き換えると分かりやすくなります。
親が子どもにサッカーをさせるのは、技術だけを習わせたいからではありません。チームワークの大切さ、最後までやり通す忍耐力、人の失敗を責めない優しさ、教えてくれた人への感謝の心。そして何より、健康に育って欲しいという願い。
でも、「心や体の成長なんてどうでもいいから、技術だけをとにかく教えてくれればいい」という親はまずいません。
それでは、サッカーだけしていれば、勉強は必要ないのでしょうか?
これには、それぞれの道具によって「鍛えられる得意分野がある」と指摘します。「強い身体をつくる」のは、サッカーのほうが得意分野。一方、勉強は「年齢を重ねてもずっと続けられるもの」「身につけやすいもの(例えば、100mを12秒で走っていたのを9秒台にするのは非常に困難)」「一度身につけたら、長く使い続けられるもの」といった特徴があります。
確かにプロスポーツ選手として活躍できる人は、全競技人口の極々わずかな方達。しかも、引退後もその世界で活躍できる人は、さらに絞り込まれます。対して、勉強はそこまで活躍できる人を選びません。
つまり、どちらか一方が優れている、というのではなくて、それぞれに優れた特徴があるということです。
その上で、手紙屋は勉強を「自分を磨くこと」にとどめず、「人の役に立つように使うこと」を強調します。過去に成功している人たちの共通点に、必ず「世の中のためになる人になりなさい」と言われて育ったという点を指摘します。
この点は申し上げるまでもなく、過去に多くの方々が言及しています。例えば、The St. John Group創設者のRichard St. John氏は、7年間に500人のTED講演者(※)と参加者をインタビューしました。その結果、成功につながる大切な要素の一つに「人の役に立つことをすること」を挙げています。人と関わって生きていく以上、他者を意識しない生き方・考え方では幸せにはなれないと強調しています。
手紙屋も最後の手紙で、「これまで『自分のために』と読んでいた手紙を、『他人のために』という視点で読み直して下さい」と勧めます。女子高生も視点を変えることで、さらに新たな発見をしていきます。
勉強という道具を正しく使うこと。
その視点で、「ディベートを正しく使うこと」を考えてみます。
ディベートは決して「相手を言い負かす」ための道具ではありません。相手と理解しあい、心の通ったコミュニケーションの手段として使う。それこそが、「自分を磨き」「人の役に立つ」ディベートの勉強の仕方です。
その理念を一貫して大切にするネオ・ディベート。前回コラムでご紹介した法則8「キャスト・ライトアップ」(「話し方にもっと自信がつく100の法則」太田龍樹著 中経出版)は、相手の役に立つには、自分に何ができるのか?まさにその視点を意識するための手法でもあります。
弊社「使えるディベートセミナー」は、ディベートという道具の正しい使い方をベースに、全てのプログラムを構築しています。だからこそ「使える」ディベートを実感頂けます。詳しくは、弊社HPをご参照下さい。
以上、アビコレポートでした。
(※)TEDの解説
TEDは、アメリカのカリフォルニア州ロングビーチで年一回、大規模な世界的講演会を主催しているグループ。学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう。
講演者には非常に著名な人物も多く、ジェームズ・ワトソン(ノーベル賞受賞者)、ビル・クリントン(元アメリカ合衆国大統領、政治家)、ジミー・ウェールズ(オンライン百科事典Wikipediaの共同創設者)等も講演している。