2013.11.28.(木)
アビコ青年のネオ・ディベート事件簿
File9「論理が屁理屈に変わるとき」(2013年11月28日)
アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file9
これまで、コミュニケーションにも型を意識することの効果をお伝えしています。
しかし、本日はあえて「型が万能ではない」ことに触れます。なぜなら、その事実を理解しないまま型を使っても、「絵に描いた餅」になってしまうからです。
本日のテーマは「論理が屁理屈に変わるとき」です。
以前、職場でこんなことがありました。
私の職場では、夜に集まって業務関連の勉強会をすることがあります。営業職ですので、参加者は外勤先から帰社します。その当時、決まって遅刻してしまう若手社員がいました。
上司が若手社員に指摘すると、第一声は決まって「得意先との話が長引いてしまいました。と申しますのも、実は先日の新規採用された商品の件で・・・・」。話を聞いている上司は、あまりすっきりしない表情のままです。
彼は前回紹介した「PREPの型」に基づいて、一応の理屈は通った話をしています。でも、聞いている上司は釈然としないまま。そんなことが何度も繰り返されるのですから、周りも聞いていてヒヤヒヤ。
もうお気づきの通りです。
本来ならば、彼が発するべき第一声は「遅れてすみませんでした」の一言でした。それがないまま、いくら論理的な話を続けても、全て「詭弁・屁理屈」の域を越えません。そこに気づかないままテクニックを駆使したところで、「彼は口だけは達者なんだけど、素直さが足りないんだよな」と嬉しくない印象を持たれてしまいます。
私も新人時代、同じようなミスをしたことがあります。
お客様にどうしても書いてもらう必要のある書類がありました。法律でも義務づけられている大切な書類です。ただし、とにかく細かくて、業界では最高に面倒なことで有名な書類です。
案の定、書類を前にしたお客様は、面倒そうな表情をされています。でも、法律上、どうしても書いてもらわないといけない書類です。私は慌てて会社に言われている通りにお願いしてしまい、「そんな時間はない!」と怒らせてしまいました。
ここでも私が取るべき行動は、理路整然と書類記載の手順を説明することではなく、まずは「お客様にご負担をお掛けする事実」をしっかりと受け止めることでした。お願いを切り出す前に、まずは、相手の気持ちを察して「お忙しいところご負担をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございません」と、心から誠意を伝えることでした。
この一件で、私自身も多くのことを学ばせてもらいました。やはり、論理は万能ではないこと。論理が力を発揮するためには、まずは相手に話を聞いてもらえる土台を築くこと。言い換えれば、心の扉を少しでも開いてもらった上でなければ、全ての理屈は空回りすること。
当たり前のことですが、その「当たり前」ができなくて思い通りに行かないことは多々あります。
「人間は感情の生き物である」。
この事実を、ネオ・ディベートでは大前提にしています。そのために、ロゴス(論理)だけではなく、パトス(感情・情熱)、エートス(人間的魅力)—コミュニケーションの三要素— を意識したディベートを追求しています。
その上で、様々な型を学び、実践しているBMの先輩方を見ていると、改めて型の持つ威力を実感します。コラムで型をお伝えする以上、私自身もコミュニケーションの三要素を常に念頭に置いた上で、少しでも皆様のお役に立てる情報を提供していきたいと考えております。
本日もありがとうございました。
以上、イバラキからアビコレポートでした。