2013.10.18.(金)
アビコ青年のネオ・ディベート事件簿
File7「相手を主語にする」(2013年10月18日)
アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file7
前回のコラムでは、会話にも「型」を意識することの大切さをご紹介しました。武道やスポーツにも型があるように、会話にだって型はあります。
今回も、そんなちょっとしたコツをご紹介します。効果は絶大です。
本日のテーマは「相手を主語にする」です。
先日、デパートにスーツを探しにいった時のこと。隣で接客をしていた新人の男性店員さんの対応が印象的でした。
◆新人店員「何をお探しですか?」
○お客さん「スーツです。」
◆新人店員「そしたら、こちらがお勧めです。これとこれと…」
○お客さん「あ、グレーのスーツじゃなくて…」
◆新人店員「このグレーのスーツは最新のモデルです。生地の素材も原産国を吟味してますし、何よりこのカラーは滅多に出回らないタイプですからお勧めです。私も気に入って買ってしまいました。残りあと一着ですし、とてもいいタイミングかと思います。試着してみますか?」
○お客さん「………あ、また今度来ますね…」
このやり取り、ウソのような本当のお話です。店員さんは一生懸命でした。まだ配属されたばかりで、やる気もたっぷり感じられました。きっと研修で教わった商品の特徴を、一生懸命話してくれたんだと思います。でも、これではお客さんはお財布の紐を緩めてはくれません。
確かに、間違ったことは言っていない。
でも、気合いを入れるほど空回りしてしまう。
こんな場合はどうすればいいでしょう?
ここで使える型の一つが「相手を主語にする」です。
先ほどの新人さんは、常に主語が「自分自身」だったのはお気づきでしょうか?
スーツを気に入っているのは「彼自身」であり、グレーの色を推奨しているのも「彼自身」です。会社の意向も含めて、全部「彼の立場」目線。
一方、いつも私の対応をして下さる中堅の女性店員さんは、とってもスマートな対応をされます。
◆女性店員「アビコさんは、今日は何色をお探しですか?」
○アビコ「黒系のスーツを探しているんです。」
◆女性店員「黒ですね。アビコさんがお持ちのスーツと柄が被らない商品ですと、こちらの織り柄のストライプ柄とチェック柄のタイプがご用意できます。」
○アビコ「確かにとっても良いですね。ただ、実は別なブランドで似たようなスーツを持っているんです…」
◆女性店員「そうですか。似たようなスーツをお持ちなんですね。アビコさんはいつも黒系のスーツをお召しになりますものね。」
○アビコ「はい。そう考えてみると、いつもと違う系統の色合いもいいかもしれないな…」
◆女性店員「かしこまりました。そうしましたら、ちょっと系統を変えて、落ち着いたグレー柄のこちらはいかがですか?お色は変わっても、それほど派手な印象にはなりませんよ。」
○アビコ「あっ、たしかに良いですね」
アビコは面倒なお客ですね(笑)
私はスーツが好きなので、気に入ったものがあるとついつい買ってしまいます。
さてさて本題。
先ほどの新人店員さんと、私に対応してくれた女性店員さんとの違いは何でしょうか?
そうです。女性店員さんは、常に「お客さん」を主語にしているのです。
だから、お客さんは
「自分のことを考えて選んでくれているな…」
「少しでも自分の趣味にあったものを探して、提案してくれているんだな…」
そんな好印象を持ってもらえます。
そうすれば、お客さんも自分からもっと情報を店員さんに伝えようと思います。店員さんも、お客さんの求める商品を絞り込みやすくなります。お客さんは満足のいく買い物ができますし、結果的にお店の売り上げも上がります。まさに、Win-Winの関係ですね。
これは何も営業の場面だけの話ではありません。
社内で上司や同僚と話をするとき。
プライベートで関係を深めたいとき。
初対面の人とお話しするとき。
どんな状況でも、より良い人間関係を築く上で大切な型になります。どんな人でも、自分のことを気にかけてくれる人には好感が持てますからね。
私の拙いコラムを読んでくださっている皆様は、もうお見通しのはずです。
そうです。これもキャストライトアップに通じるお話なのです。
「自分が話すのだから、自分の視点から話せば良い」のではなく、「コミュニケーションは、色んな人の立場に立って考えることが大切」ということです。そうすれば、相手の気持ちを察した上で、相手の心にまで響く言葉を紡ぎ出すことが出来ます。
ちょっとしたことですが、結構使える発想だとは思いませんでしょうか?
こんなコツが詰まった、その名も「会話のきっかけをつくる ちょっとしたコツ」(太田龍樹著 成美文庫)という本から、今後も機会を見つけて会話のヒントをご紹介していきたいと思います。
ディベート発想を日常に活かすための具体的なコツが満載です。今後ともよろしくお願いします。
以上、茨城からアビコレポートでした。