講評

講評

論題

BM D-1GPⅡ FINAL サードバーニング BMディベートキング選手権試合
「日本の首相は、靖国神社に参拝すべし。是か非か」

講評:高澤拓志

肯定側:久保田浩
否定側:中村貴裕
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数 118名
肯定側 (55.39P) 否定側 (46.8P)

■<概   略>
肯定側は、首相の靖国参拝が国益につながるという壮大なる哲学を掲げてメリットを証明したのに対し、否定側は憲法問題とアジア諸国との外交問題で反論。しかし、哲学の差と相手との論のかみ合わせ方が勝敗を分けた。

■<肯定側立論>
◇哲学:国益を護るべき行政府の長が靖国神社を参拝すべし

◇プラン
  ① 首相が靖国神社を参拝する
  ② 平和と不戦を誓う

◇メリット
 ①遺族感情

    evi) 岩井容子「陳述書」より 
    自分が死ぬより、靖国神社がなくなることの悲しみははかりしれない

 ②国家として当然のことができる

 ③内政干渉を受けることなく自国の信念を貫ける

A級戦犯が合祀されたのは1978年。中国から批判が出たのは1985年の中曽根元首相の公式参拝以降。この間の空白期間に整合性がない。また、韓国は交戦国ではない。

■<否定側尋問>
国益について確認
国益とは「国家の平和と安全。国民が国家を信頼できなくなることで秩序が乱れる」との定義。また、憲法問題や東京裁判についてはテンポよく尋問していたが、 振り返ってみると内容的に自分に有利になるような回答を引き出せなかった。

■<否定側立論>
◇哲学;首相の靖国参拝は憲法違反であり、アジアとの関係を悪化させる

◇靖国神社とは? (War Shrine)

① もともと軍省管轄の神社
②兵士調達
③遊就館という戦争を美化した資料館がある
④祀ってあるのはA級戦犯を含む戦没者のみ(戦争で命を落とした一般市民は祀る事ができない)

◇内政干渉とは?
他国が、強制的に政治に関与し、主権を侵害すること

◇デメリット
①憲法違反 
日本国憲法20条「政教分離の原則」
福岡地裁などで違憲判決 いまだに合憲判決はない

②国民が望んでない 
evi) 毎日新聞アンケート  50%が反対 41%が賛成
自民党古賀元幹事長 「近隣諸国の感情を考えると参拝すべきでない」

③アジア諸国との関係悪化
A級戦犯の正当化がおこなわれているサンフランシスコ講和条約の受諾=東京裁判の判決受入である。したがって、東京裁判の判決は有効であり、A級戦犯の合祀は批判されてしかるべきもの。

■<肯定側尋問>
憲法問題は、「目的効果基準」があってグレーであることをひきだす。また、1978年からの空白期間については反論なし。、A級戦犯の問題についてもなし。

■<否定側反駁>

靖国神社参拝の代替案として、「全国戦没者追悼式」への参加を訴える(福岡地裁の判決にもあるように)。
これなら、宗教との関わりもなく、310万人の一般市民の慰霊になる。小泉首相が靖国神社を参拝してから、国民の参拝が2倍に増えた。これは、国が国民の宗教活動を誘導している証拠だと主張。
アジア感情について、靖国神社を軍国主義の象徴と考えている割合は日本が12%であるのに対して、中国は65%もあり、依然へだたりが大きい。

◎ 全国戦没者追悼式の論は、立論で出すべきでここではニューアーギュメントとされても致し方ない。これは、立論で出したデメリットと関連づけた反駁と捕らえることもできるが、ひとつの代替案として否定側のよってたつ大きなものであることからも、やはり、立論で(カウンタープランとして)だすべきであった。

■<肯定側反駁>
日中の考え方に相違ある。だからこそ不戦の誓いをすることが重要。全国戦没者追悼式にもA級戦犯の慰霊はある。小泉首相によって参拝者が2倍に増えたのは、インパクトと論拠が不明確。逆に、政教分離に関しては、「目的効果基準」があり、靖国参拝に対しては基準を満たしている。

アンケート調査の抽出された世代がわからない遺族は国家神道を崇拝、遺族会会長の反対だけをクローズアップしすぎ
サンフランシスコ条約の受入は「accept the judgement」。 東京裁判やA級戦犯のすべてを受け入れたわけではない
◎ 否定側のデメリット3点にに丁寧に反証していった肯定側であった

■<否定側最終弁論>
アジア諸国との関係について、さらにおしていく。
中国は1972年の国交回復 日本は侵略戦争を反省しているとの認識で賠償金を放棄した
なのに靖国参拝は中国国民にとって逆効果
韓国についても、日韓の首脳会談で話題の9割が靖国問題というのは異常。経済的結びつきも強く、中国へは輸入が10兆円、輸出が11兆円、韓国へは輸入が2兆円 輸出が4兆円と関係悪化はマイナス

◎ アジア諸国との関係に絞っての主張だったが、最終弁論の構成としてはもうすこし全般にわたって整理すべきでは。
肯定側に反論された「目的効果基準」や、Å級戦犯が合祀されてからの空白期間にていて言及がない。
肯定側の哲学を崩すような友好な反駁がなかったのが残念。

■<肯定側最終弁論>
デメリットの反証として、再度「目的効果基準」の存在を示す。
メリットの補強
①遺族感情については遺族会会長以外の大半の方が陳述書にあるような想いをもっている。
②戦没者の慰霊は日本だけでなく他国でも行われている
③内政干渉をうけるべきことではない。
中国は、空白期間でもわかるように矛盾があり、「外交カード」として使われている。 否定側の経済効果については、靖国参拝しなかったときのインパクトが示されていない。

■<判定と総括>
肯定側の勝利。判定理由は以下の通り。
肯定側の哲学である国益についてメリット3点を主張したのに対し、否定側は有効なる反論がなかった。
ディベートは、肯定側がつくった土俵でたたかわなければならない、

一方、否定側はデメリット3点をだしたが、反駁以降での論の展開において靖国参拝すべきかどうかということに結びつく重要性がのべられていない。
アジアとの関係については、経済効果など具体的なインパクトが述べられてなく、中国、韓国との関係については、歴史的背景をつうじてもっと強い論ができたのではないか?
靖国神社の特徴を立論で4点述べたのだから、それとアジア問題を結びつけてもっとアピールすれば勝機はあったように思える。

憲法問題では、先ほども述べたが「全国戦没者追悼式」を立論でしっかりとした柱にすることで、強いものになるが、反駁で出すのは、ニューアーギュメントとして重大な違反ととられても仕方ないであろう。
肯定側は、否定側のデメリット3点にきちんと反証しており、それに対するる回答がなかったものが多い。

以上より、哲学の部分でも勝り、メリットがすべて立った肯定側に対し、デメリットをすべて返されたとの判断に至り肯定側の勝利とした。

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