講評

講評

論題

BM D-1GPⅡ FINAL ファーストバーニング
「論題:クールビズはありかなしか」

2005年8月

あり側:奥山真
なし側:中村貴裕
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数 40名
肯定側 (51.07P) 否定側 (51.7P)

■<概   略>
気候変動のインパクトを打ち出し、温暖化対策として、国民一人一人が行う事が出来るのはクールビズだと、政府代理人の立場を取る肯定側と、スーツの効用を強く打ち出し、クールビズの効果は薄いと主張する否定側。
勝負のポイントは、反駁以降の証明の有無にあった。

■<肯定側立論>
◇哲学:高温多湿の日本の夏にマッチした、国民一人一人が出来る温暖化対策

◇現状分析;地球温暖化の現状 evi)国立環境研究所より
  温暖化がこのまま続けば、2100年には平均気温が4度上昇する。
  昨年の日本の最高気温は42,7度。
  単純に計算しても、46,7度となり、本州の大半が亜熱帯地域となってしまう。

◇メリット
 ┣①京都議定書の推進に繋がる
  ・達成計画でオフィスビル割当分の5~9%に相当
 ┣②企業の現場に喜ばれる
  ・男性⇒体感温度2度低下
  ・女性⇒冷房地獄・乾燥地獄からの開放
 ┗③コスト削減
  ・冷房温度UP(26度⇒28度)で光熱費17%DOWN
   コクヨ800万円の削減に成功
   各家庭では年間¥2000の削減に繋がる

沖縄・奄美地域に加え、本州の大半が亜熱帯となる重大性・深刻性を打ち出してきた。そこで、問題解決としての「クールビズ」というPLAN。それにより、メリットが3点発生するという構成。分りやすい構図だ。本州の大半が亜熱帯となってしまうこのインパクトは非常に大きい。

■<否定側尋問>
かなり効果的な尋問を連発していく。テンポ良く繰り返される否定側11の質問に対し、肯定側は返答に困窮する場面が目立つ。「提唱する立場にある、小泉首相が、何故、衆議院解散の時にスーツを着ていたのか?」「クールビズをやる事によって、この4度はどれくらい下がるのか?」「ホクヨウは営業マンに対してはクールビズを推奨してないのはご存知か?」「女性の乾燥の話で問題になっている人はどれくらいいるのか?」肯定側は、何れも定量的な数字を示せず、追い込まれていく。

■<否定側立論>
◇哲学;公の場、勝負の場で使えないクールビズは無しである

◇観点
 ┣①スーツには効用がある
  ・信頼性
   視覚に残る印象が70%
   胸元の三角ゾーンが綺麗に見せ、相手に信頼感を与える
  ・無難さ
   顔やお腹に視線を行かせない
   日本は過去20年間で、肥満の割合が1,5倍
   サラリーマンのビールっ腹をVゾーンで回避出来る
  ・緊張感
   ネクタイはフォーマルさを演出する
   ネクタイは、緊張感・集中力を上げる
   
   クールビズによりこれらの効用が失われる

 ┣②クールビズはコストがかかる
  ・国民企業が破綻する(1000億円のコスト)
  ・業界がダメージを受ける(電力業界1000億円、ネクタイ業界400億円)
 
 ┗③環境対策として非常に疑いがある
  ・クールビズは、環境問題の鬼門  
  二酸化炭素290万㌧の削減は京都議定書の0,2%  
   これは非常に小さな数字 

こちらは、スーツの効用を訴え、クールビスの費用対効果を上手く打ち出してきた。構成も非常に分り易く、勢いに拍車をかける。

■<肯定側尋問>
いまいち攻めきれない尋問であった。「勝負時に着れない根拠は?」「ネクタイが緊張感を出す根拠は?」以上2点に対し、否定側は後で示すと一蹴。結果、否定側は反駁以降も、根拠を明確にしてないのであるが、リズムとテンポに押し切られた感がある。

■<否定側第一反駁>
尋問で「環境対策の疑い」を指摘されたのを受け、すかさずパワーポイントで、クールビズが温暖化対策として、他の施策に対し非常に効率が悪いと指摘。費用対効果を上手く示した図表を用い、クールビスのインパクトを押し殺しながら、且つ、太陽光エネルギーの効果を主張。効率よく、お金と労力を使うべきと訴える。否定側の勢いは更に加速する。

■<肯定側第一反駁>
国民一人一人が出来る、温暖化対策は、そんなに無いと主張。国・企業・国民が一体になって行う事にクールビズの意義があると訴える。又、8割の日本人がクールビズは良いものとして認めていると主張。浸透していけば、問題はないと訴えるが、歯切れが悪く、効果的な反駁になっていない感が垣間見える。

■<否定側最終弁論>
提唱している小泉首相が、いざ勝負の時にはスーツを着ていると、またしても資料を用い駄目押しである。更に、国民一人一人と主張する肯定側に対し、ホワイトカラーは1500万人であり、全国民の1割に過ぎないと隙を与えない攻守を展開。又、日本より暑い国のタイやマレーシアでもサミットの場等の公の場ではスーツを着用と展開する。

■<肯定側最終弁論>
クールビズはまだ始まったばかりで、浸透していない。それを数ヶ月間の写真を持ってきて訴えるのはナンセンスだと主張。8割が賛同してるのだから普及していく可能性は高いと訴える。環境問題に取り組んでいるという、セールストークの切り口にも使えると主張するも、最後まで、後手後手に回ってしまい完全にペースをつくる事が出来なかったと言えよう。

■<判定と総括> 熱い男、奥山真が序盤からいつもの精彩を欠く。一方、チャレンジャーとして胸を借りる立場の中村は、勢いがあり、テンポ良く自然とリズムを掴んでいく。しかも、図表を上手く駆使し、きっちりとオーディエンスに訴える証明を随所に行い、奥山に付け入る隙を与えなかった。反駁において、費用対効果をきっちりと論証した否定側に対し、肯定側は成す術なし…。ここが正に、勝負の分かれ道だったであろう。以降は、否定の独壇場で、駄目押し攻撃が続く。潜在能力はピカイチの奥山だけに、大舞台で力を発揮できなかった事が残念に思われる。内容以外に、声の張りや、目に力を感じなかった奥山。マイクや資料を駆使した中村に対し、劣勢に立たされたのは否めない事実かもしれない…。

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