論題
BMニューディベートフロンティア2005 ファイナル 第1試合
「論題:日本政府は納税者番号を導入すべし」
講評:本間賢一
肯定側:ファウスト 奥山真・井上晋
否定側:ブラッズ 中村貴裕・中村雅芳
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数 22名
肯定側 51.64P(12票) 否定側 49.8P(10票)
■<概 略>
納税者番号制の導入で、正確に所得を捕捉し、公平な課税、年金の一元化を実現すると訴える肯定側。
一方、納税者番号制を導入しても、所得は捕捉できず、むしろプライバシーを侵害され、犯罪が増加すると訴える否定側。
僅差の試合となったが、肯定側の勝利となった。
■<肯定側立論>
◇哲学・理念:『納税者番号制による正確な所得の把握』
◇プラン5点:
┣①2006年4月より、導入。基礎年金番号を元とする。
┣②企業にも付番
┣③納税業務と社会保険業務にのみ利用
┣④課税対象は現行の50種類全て
┗⑤国民は自分の情報の取り扱いを問い合わせできるなど、プライバシー権に配慮
◇メリット3点
┣①不公平税制の是正
┣②年金の一元化の準備が整う
┗③総合課税の実現
まず、所得を正確に把握できていないのは、自営業者の自己申告による徴税方式にあり、そこにチェックが行き届いていないからだと分析。納税者番号制導入により、税務処理実務の手間が減り、実地調査を増やせ、チェック機能が働くようになる、と述べる。
この部分が言い切れれば、メリット①②の立証に限りなく近づく。メリット③については、労働以外の所得が多すぎ捕捉できないため、現在実現できていない総合課税が実現できると訴えた。
■<否定側尋問>
メリット①と②の発生過程が、実地調査の増加によるものであることを明確にした。また、コストは約1600億円かかることをを認めさせ、プライバシーを完全に守れるかどうかを確認した。肯定側は、個人情報保護法などで守れると回答。
■<否定側立論>
◇哲学・理念:『納税者番号制は基本的人権の侵害につながる』
◇デメリット3点
┣①プライバシーが侵害される
┣②犯罪の増加
┗③民間へのコスト強要
まず、デメリットを述べる。
デメリット①他人の番号を簡単に知ることができるから、プライバシーが侵害される。重要性としては、プライバシーの侵害は、憲法で保障されている基本的人権の侵害であると述べる。
デメリット②アメリカなど海外の事例、住民基本台帳制を悪用した事例を上げ、 犯罪の危険性を訴える。
デメリット③民間コストは1600億円。肯定側への反論としては、エビデンスを上げ、 「全ての取引に納税者番号を付与し、データ化しないと、所得は捕捉できない」と反論するが、これは、実地調査を増やして所得を捕捉すると訴える肯定側の主張の反論にはなっていなかった。
■<肯定側尋問>
否定側はプライバシーの侵害=憲法で保障されている基本的人権の侵害と訴えていたが、プライバシーの侵害が基本的人権の侵害にあたるかを明確にするのに時間の大半を使った。結果的に否定側は基本的人権の侵害にあたると いえていなかった印象を受ける。
■<否定第一反駁~最終弁論>
M2M3およびD1D2はお互いに効果を定量的に示しきれなかった。肯定側はM1の効果については、日本は実地調査の割合が1%であるのに対し、納税者番号制を導入しているアメリカは2%であることであり納税者番号制を導入すれば、日本も実地調査の割合が2%になる。そしてその際には約1000億円所得を多く捕捉できることで税収が上がると述べる。
ここで、実地調査の割合は納税者番号制を導入するかどうかだけで決まるのではないため、この試算はまずかなり怪しい。さらに、否定の論でコストが1600億円かかり、これはほぼ疑いようのない以上、否定の論が勝ったかに見えた。しかし、投票結果は、力強いスピーチで観衆を味方につけた肯定側に軍配があがった。