講評

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論題

BMディベートグランプリ2004 予選リーグ~決勝トーナメント:決勝トーナメント第1試合
「日本政府は、遺伝子組み換え作物・食品(GMO)の生産・販売・輸出入を全面禁止すべし」

講評:久保田浩

肯定側:ディベーターC
否定側:中西夏雄
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数11名
肯定側 54.7P(10票) 否定側 48.2P(1票)

■<各々の立論>
肯定側はその立論において、「安全性確保」を哲学にあげ、①食品の安全性確保と②収穫量の現状維持 をメリットにあげてきた。
メリット①については、"価値"と"量"の観点から発生過程を述べた。
"価値"については、生命倫理の観点で種の壁をこえること、食品添加物における検査に比較して簡易な検査であること、の2点。 "量"については、従来の品種改良との比較で、検証にかけられる時間が少ないこと、農薬使用の量が増えること、の2点。
メリット②については、米国での実例をデータとして使用。論拠を伴った、構成もまずまずの立論で試合はスタートした!

一方、否定側はその立論において、
「人にとっても環境にとっても有益であるGMOは取り入れるべきだ」という哲学を掲げてきた。
肯定側への攻撃として、メリット①(安全性)については、現状においても3省6段階のチェックを経ているから問題ないこと、実際に今まで問題がおきていないことをアピールした。
メリット②(収穫量)については、逆に収穫量が増加している実例を出してきた。
またデメリットとして、①(生産者の立場から)農薬の使用アップによりコスト負担増、(消費者の立場から)味が悪くなる、栄養価が落ちるといったこと②除草剤等の使用量増加によって環境への悪影響があること挙げた。構成はまずまずであったが、デメリットについては、論拠データともに弱い。

■<尋問及び反駁(最終弁論)>
ポイントの一つである安全性については、否定側は6段階のチェックで十分であると繰り返し主張したのに対して(免疫系へのアレルギー検査なども動物実験により確認済みであることを追加)、肯定側は食品添加物と同程度の検証が必要だとした。
GMOは他の遺伝子を組み入れることから食品添加物と同等と見なしたのだ。もう一つのポイントである収穫量については、それぞれに主張を裏付ける実例を再度あげた。
一方デメリットについて肯定側からの攻撃が入った。名古屋大学教授のエヴィデンスとして、除草剤の使用量が増えること、現在の輸入作物の割合を分析してみると、味の悪くなる対象は非常に少ないこと(6%程度)からその影響は軽微であることが述べられた。

■<講評>
全般的に、特に反駁において、肯定側は豊富なデータを裏づけに主張を展開していた。
ここでの大きなポイントは、安全性について。肯定側は、"価値"と"量"という二つの観点による判断基準を持ち出してきたのに対し、否定側は現状の検査で問題ないことの判断基準が明確ではなかった。これが肯定側勝利の大きな要因である。もう一つの収穫量について、これは両者ともに実例をあげてきたことから、決定的な差がみられずイーブン。
一方、デメリットについても、肯定側反駁で用いられたデータによって、その影響はあったとしても限定的であると判断した。よって、最終的には肯定側の勝利とした。ただし、両者ともに最終弁論にむけての論の展開が見られず、主張の繰り返しになっていたことから、尻すぼみの感であったことは否めない。

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