講評

講評

論題

BM漢祭り2004 エキシビジョンマッチ
「論題:日本の公立小中学校は小・中一貫教育にすべし」

講評:井上晋

肯定側:奥山・ディベーターA
否定側:久保田・中村雅芳
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数9名
肯定側 53.29P(4票) 否定側 46.57P(5票)

■<概   略>
今年の記念すべきオープニングゲームは、奥山・ディベーターAVS久保田・中村雅芳のタッグ戦でスタートした。
肯定側 奥山・ディベーターAチームは、綿密なプランによる、柔軟性と開放性を 目指す教育改革を提示。否定側久保田・中村チームは、プランの実行可能性と、幼少期の心身ともに不安定な子供を一緒に教育することのデメ リットで応戦。

■<肯定側立論>
◇プラン6点
 ┣①1万校の中学校を廃校→自治体の自由資産とし、2万校の小学校を一貫校に
 ┣②カリキュラムは各一貫校の自由にさせる
 ┣③学区内の最寄の2校から家庭に小学校を選択させる
 ┣④入学から3年次までに1回だけ転校可
 ┣⑤教職員数は生徒数に応じて変更
 ┗⑥年一回の統一テストと成績の悪い学校の改善

◇メリット4点
 ┣①学校間の競争による教育の質の向上
 ┣②教師の交流による先生の質の向上
 ┣③教師の負担軽減(特に小学校教師)
 ┗④イジメの改善

まずは、肯定側の立論がディベーターAのオープニングスピーチでスタート。昨年、無言で立ち尽くしてしまうことの多かったディベーターAであるが、歯切れ良く、まとまった立論を展開する。「原稿のある肯定立論」ということもあったが、念入りな準備があったことを感じさせた。内容は、プラン導入から、教育の質の向上、教師の質の向上、イジメの改善のメリットを導き出したもの。
特に、学校間の競争を取り入れることによる教育の質の向上というプランには、キラリと光るものを感じた。

■<否定側尋問>
続く、尋問は中村担当であったが、立論の確認に終始し、質量ともに印象に薄いものになる。否定側の尋問は、「攻撃開始の狼煙」だけに、やや後の展開に不安を感じた。

■<否定側立論>
◇デメリット3点
 ┣①環境変化をなくすことで子供が育たない
 ┣②中だるみが発生する
 ┣③法改正のコストが発生する
 ┗⑤不安定になる12歳以上の子供と小学生を一緒にする悪影響

いよいよ、BMディベートナイト久保田による否定立論。主旨は、実行可能性の検証とプランの論題充当性(メリットは一貫教育でなくても発生する)ということ、そして、小→中の環境変化がないことにより、逆に子どもが育たない、精神的に不安定になるという、大きく2点のデメリット。
時間をうまく意識した構成であったが、これまたインパクトにかける。特にハード面(校舎など)と法制面での実行可能性を重視しているあたり、全体的な弱さを感じた。何よりもインパクトの薄さを感じさせたのは、現状維持を積極的に採る否定側の哲学が不在であったことか。

■<肯定側尋問>
続いて奥山による尋問。2003年後半の失速を埋めるべくリベンジに燃える奥山の顔面からは気迫が漂う。尋問にも奥山独特のテンポがある。一貫教育のメリットを認めさせる、有効な尋問。これは、後半にかなり生きてきて、否定側の論理矛盾を明確にした。また、6・3制を進める積極的な根拠をずばり尋問するなど、より論題の本質を深堀りする良い質問が目立った。論題に対する考察という準備の確かさを感じさせ、勝負の行方を確定させた尋問であった。

■<否定反駁~最終弁論>
かすかに逆転の期待が残った、ネガティブブロックとなる否定側反駁も、実行可能性の追求と立論の繰り返しのみに終始し有効打なく終了。その後、ディベーターAのやや的を得ない最弁がやや危なげを見せるが、すでに大勢はきまっており、試合終了となった。

■<判定と総括>
一部の局地戦では、否定側に利もあったが、試合全体を通して「柔軟性と開放性を兼ね備えた公教育」という未来の教育に向けての明確なスタンスを通した、肯定側が論を通した。

奥山らしい問題への執拗な本質追求が、タッグチームの底力となって見事に現れた試合だった。2003年不振に喘いだ二人が見せたこのパフォーマンス、今後の漢祭りの台風の目になることだろう。

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