講評

講評

論題

BM登龍門Ⅰ
「日本の小・中学校は週5日制を変更すべし」

講評:奥山真

肯定側:ハートビート(ディベーターD・ディベーターE・ディベーターF)
否定側:ナッシュ均衡(ディベーターG・ディベーターH)
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数 13名 肯定側57.24P(11票) 否定側 50.29P(2票)

■<概   略>
肯定側は「生きる力」を、課題発見&解決能力とおき、広義の意味において正義感、道徳などを含むと定義、土曜日に自然体験、企業の専門家の活用を図ったプランで哲学の実現を図る。
対する否定側は、多様な人材を育成することを変化を続ける現代日本の課題と位置付け、土曜日を画一的にする肯定側プランを反論。その上で社会全体が週5日制に向かう流れに逆行すると主張。

■<肯定側立論>
◇プラン3点
 ┣①学習カリキュラム現行のまま
 ┣②土曜日の積極活用を義務化(自然体験、企業見学、etc)
 ┗③教師や親の同伴

◇メリット2点
 ┣①総合学習の授業への参加
 ┗②社会人、専門家の活用

メリットは2点主張されているが、いずれも「土曜日の積極活用による生きる力の育成」という肯定側哲学の発生過程と解釈した。よって、哲学の実現ができるかどうか、否定側が主張するデメリットがそれを上回るかが勝負の趨勢を決める。立論の構成はシンプルながら、極めて明快であり、分かりやすさで後述する否定側立論を遥かに凌ぐ。加えて、ハートビートのディベーターFの発表も新人離れした落ち着いたものであっ た。肯定側立論以外のパートの発表も是非聞いてみたいものである。

■<否定側立論>
立論構成は、メリット二点(実際には発生過程二点)の反駁に半分以上費やし、その上で否定側哲学⇒デメリットという流れ。しかしながら、肯定側と比較すると極めて分かり辛いものであった。ラベリングナンバリングができていない為、ジャッジが議論を追い辛くなってしまったのだ。また発生過程、深刻性に全く触れていない為、デメリットは論証されていないと判断。この時点で否定側は肯定側哲学を潰しきらなければならない展開となった。

■<否定側第一反駁>
ナッシュ均衡のディベーターHの否定側第一反駁。本来このパートでは、メリットの反駁・デメリットの補強を証拠資料を引用しながら行うべきだが、新たな証拠資料の提示が不足していた。また、QAで触れただけの「社会的コストの増大」というデメリットを主張したが、立論で提示されていないのでニューアーギュメントとして判断した。強力なネガティブブロックを構成できなかった点が悔やまれる。パートナーであるディベーターGの否定側立論を補完するべく動いて欲しかった。

■<肯定側第一反駁>
ハートビート・ディベーターEが見事な肯定側第一反駁を展開した。否定側立論と第一反駁の二つを返さなければならない極めて重いパートだが、コンパクトに効率よく反駁していく。哲学の実現への発生過程を見事建て直し、何故土曜日が必要か、という点について再説明ができたのが大きい。今後のディベーターEのディベートが楽しみである。

■<否定側最終弁論>
否定側の主張はよく分かる内容だったが、肯定側第一反駁に対して有効な反駁はできなかった。論理的思考に優れるディベーターGだが、傾聴力という点に今後の課題があると感じた。肯定側哲学実現への二点の発生過程が残り、この時点でデメリットが立っていない否定側の敗 北が決まる。

■<肯定側最終弁論>
「社会と親が子どもを支えるべき」というシンプルな主張で最終弁論を開始したハートビート・ディベーターDだが、哲学である「生きる力の育成」を肯定側プランでいかに実現するかについてうまく補強していく。
最後には「かわいい子には旅させろ」という諺を引用し、肯定側プランにより実現する数多くの社会との接点・経験が子どもの「生きる力」を育んでいくと締めくくった。これも見事な立論の再構成であった。

■<判定と総括>
判定は、哲学を残すことができた肯定側の勝利。
「シンプル」という言葉がぴったりとくるディベートを展開したハートビート。三人チームのハンディキャップを見事跳ね返し、勝利をものにした。まさに「シンプル・イズ・ベスト」を地でいった形だ。ディベートの完成度において否定側ナッシュ均衡を遥かに上回っていた点は大いに評価したい。
一方、荒削りながらも、ナッシュ均衡の理論構成には目を見張るものがあった。十分な議論を重ねた結果であろう。しかしながら、論理展開を伝える力、相手の主張をよく理解し反駁する力、観客を納得させる信頼感、そうした部分がナッシュ均衡に不足していた点は非常に惜しまれる。今後の改善に期待したい。

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