2017.3.31(金)
第46回 「時間外労働の上限規制と働き方の問題」(2017年3月31日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第46回
私もほのぼのとした気持ちになりたく、コラム・タカハシの眼 第29回で紹介されていた、『天使のくれた時間』を鑑賞しました。
とても良い映画でした。
ニコラス・ケイジが演じる主人公は金融街のトップエリートでしたが、ある日突然「自動車タイヤの営業マン」になってしまい、そこからさまざまなストーリーが展開します。詳しくは是非とも映画をご覧になってください。
ほのぼのとした気持ちと合わせて私が感じたのは、働き方の問題についてです。
その日はちょうど、安倍首相が経団連の榊原会長と連合の神津会長と会談し、「時間外労働の上限規制について繁忙期の1か月の上限を100時間未満とする」との決着が図られた日でニュースでも盛んに取り上げられていました。
「100時間以内ではなく、100時間未満になったのでよかったよかった」
「これで働き方改革がまた一歩すすんだ」
みたいな報道が多かったのですが、果たしてそうでしょうか。
まず、100時間という時間についての検証がものすごくざっくりしています。
日本医療労働組合連合会(医労連)は、
「夜勤交代制労働など業務は過重である。政府案はまさに過労死を容認するもので、断じて容認できない。月60時間が過労死ラインと主張する」
との談話を発表していますが、あまり取り上げられていません。
スタンフォード大学から2014年に提出されているディスカッションペーパー「作業時間の生産性」では、「週50時間以上働くと労働生産性が下がり、63時間以上働くとむしろ仕事の成果が減る」というエビデンスも発表されています。
(これは、長時間労働で労働生産性の低い日本の状況を裏付けているようにも思います)
一方で、企業でそれなりの地位に上り詰めた人や起業家などは、事業の立ち上げなどに際し、ある一時期において、それはもう猛烈に仕事に打ち込んだという経験を持っていると思います。
(そうでないと、事業の立ち上げなどは成功しないのではないでしょうか)
そして、その経験があるからこそ、「本気で仕事をしてみろ、何とも言えない充実感を味わうことができるぞ!」と本気で思っているのです。
どうも、日本の働き方改革では、
「希望や自己実現に燃えて、気が付いたら夜中まで仕事してしまっていた。」
という状態と
「上司に命令され、コツコツとした作業を繰り返しています。」
という状態をごちゃまぜにして、
単に時間の管理という観点だけで、働き方を改善しようとしているように思います。
自分で仕事の分量をコントロールできる立場にない人を守る為には、100時間などと中途半端なことを言わないで、しっかりを一日8時間労働を守らせるべきです。
一方で、少しでも多くの人が、自分の意思で仕事の時間をコントロールできる仕組みを作り上げるべきと考えます。それは、まさに経営者の仕事です。
働き方改革とは、労働時間に関する多くの科学的なデータを理解することと、自分の時間の使い方を自分がコントロールできるようにすることだと思います。
皆さんはどう思いますか。
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