2015.11.20(金)
第29回 「内閣支持率と日本社会」(2015年11月20日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第29回
安倍内閣の支持率が急上昇しています。
各社の調査は若干の違いはありますが、8月に底をついた支持率は上昇基調で、11月上旬実施の調査では、支持率が不支持率を上回るもしくは並ぶ、という傾向は共通しています。
安保法制の審議において、大きく下落した内閣支持率が、3か月を経ずして回復している状況を我々はどのように捉えるとよいのでしょうか。
一つには、安保法制成立後のTPP交渉、日中韓の首脳会談などが評価されたとの見方もできるでしょう。
ひょっとすると、一億総活躍なるキャッチフレーズが評価されているのかもしれません。
一方で、日経新聞が行ったアンケートの詳細を見ると面白い結果があります。
集団的自衛権を「行使」することに賛成か反対かを問うた質問に対して、実に57%の人が反対と答えています。
この重要な問題に対して反対であれば内閣支持率は依然低いはずなのですが、支持率は上がっています。
このアンバランスな結果を説明するために、一つの仮説を立ててみました。
それは、「私たち日本人は、変化は嫌うが,変わってしまったものは「現状」として受け入れてしまう。」というものです。
安保法制の制定については、大きな変化でかつ国民にリスクを感じさせる変化でしたが、一旦法律が成立してしまうと、それが現状になり(しぶしぶながらも?)受け入れつつある。ただし、その法律に基づいてまだおこなわれていない「集団的自衛権の行使」については未知のことなのでまだ受け入れられていない。これから起こるかもしれない変化には否定的な意見を示していると解釈すると辻褄は合います。
いかがでしょうか?
同様のことは、古くは60年安保、PKO法案、首相の靖国参拝、などなど過去にも起きているように思います。
「決まったことには潔く従う。」と言えば聞こえが良いのですが、「忘れてしまうのが早すぎる、ポリシーがない。」とも言えます。
この仮説の前提となっているのは、日本社会にある同調圧力であり、現状肯定の思考です。組織として決まったことに対して従順であり、現状に不平不満を言わないことは生産性を高める効果があると思います。
一方で、現状肯定や変化を疎ましく思う風土からは、イノベーション(革新)は生まれません。
フランスでの事件を見るまでもなく、世界がすごいスピードで想像できない方向に変化している中、日本人のマインドがいまだに鎖国状態であるとするなら厳しい結果が待っているように思います。
皆さんは、どう思われますか。
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