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2014.7.10.(木)
第10回 「日本は、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すべし」(2014年7月10日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第10回

安倍政権の活発な活動が止まりません。
安全保障分野だけでなく、経済対策の第三の矢も次々に放たれています。

その中で、今回は働く我々にとっての大きな問題にアプローチします。

本日のテーマは、
「日本は、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すべし」
です。

まず、この聞きなれない言葉を分解してみましょう。

エグゼンプション=「exemption」で、「除外する、免除する」という意味になります。
つまり、ホワイトカラー職の者にたいして、労働基準法を除外するという意味になります。
事務労働者の労働基準法除外法、、、とするとなんだか物々しいですね。

このテーマの興味深いところは、
同じ規制緩和から賛成派と反対派が全く異なる主張をしているという点です。

賛成派の主張は、概ね以下のようになります。

事務労働者に対する規制を緩和する
  ↓
労働時間と賃金との接続を切った仕組ができる
  ↓
働き手の創造性と高い生産性を発揮
  ↓
個々のニーズに合った働き方+労働時間の短縮

これに対し、否定側は、

事務労働者に対する規制を緩和する
  ↓
時間という規制がなくなると労働者は、際限なく働かされる
  ↓
労働規制を守らない企業の監督ができなくなることがさらに長時間労働を助長さる
  ↓
現在以上に過酷な労働環境になる

このように、同じ制度から全く反対の主張が展開されています。

この違いを生んでいるのは、「隠れた理由」といわれる論拠です。
使えるディベートセミナー」でもでてくる基本的な論理のお話です。

賛成側の隠れた理由は、
「労働者は、合理的に行動し、かつ、雇用主に対して自由である」
というものです。
ですから、規制がなくなると、いかに効率的に自分の収入と満足を高めるべきかを考え、合理的に行動するとみています。そこには、「なんか帰れそうな雰囲気でない」とか「サービス残業を断ると評価が下げられそう」といった曖昧だけれども深刻な問題はなさそうです。
ここでは、労働力を提供する側と労働力を買う側は、対等でビジネスライクです。

一方で反対の隠れた理由は、
「労働者は、資本家(雇用主、上司)に対して、自由でない。弱い立場である」
というものです。
その為規制がなくなると、これまで以上に残業を強いられたり、場合によっては、サービス残業が増えてしまったりと考えています。
労働者は、資本を持っている資本家に対して弱者であるという考えです。
このことは、マルクスの資本論で説かれている内容でしょう。

さて、ここまでは一般論です。

では、個別論では、どうでしょうか。みなさんの業界、会社、部門ではどうでしょうか。

私の個人的な意見ですが、一人ひとりの労働者が強くなり、かつ、オンリーワンの替えが効かない働き手として強い立場になっていくことも大切かもしれませんが、あまり現実的なプランではないように思います。
なぜなら、人間は(特に日本人は)そこまで合理的に動けませんし、そうあることを美しいとも思っていません。
個々の個性を活かしながらも、資本を持たないものも安心してともに働ける環境づくりが今日の日本には合っているのではと思います。
背景にあるのは、自分は法律に守られながらも、逆に個人の思いとして会社や仲間を大切にするという価値観です。

みなさんはどのように考えますか。

ではごきげんよう。
(写真は、深夜の霞が関の官庁街のビル)

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