2014.3.28.(金)
井上晋の「賛否両論のための基礎知識」
第5回 「日本の全ての小・中学校において、タブレット端末を利用した反転授業を導入すべし」(2014年3月28日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第5回
科学と学習という教材があり、小学生の私はその教材に熱中していました。
今でも手作りしたラジオや発泡スチロールを加工できる電熱線などは、その仕組みまでよく覚えています。
さて今回のテーマは、教育について。
論題はずばり、
「日本の全ての小・中学校において、タブレット端末を利用した反転授業を導入すべし」
という論題です。
この論題は、BMコラムニストのひろ☆たかさわさんも取り上げられていた通り、
『使えるディベートセミナー』の第10期で扱った論題です。
反転授業とは、
「ブレンド型学習の形態のひとつで、生徒たちは新たな学習内容を、通常は自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、逆に従来であれば宿題とされていた課題について、教師が個々の生徒に合わせた指導を与えたり、生徒が他の生徒と協働しながら取り組む形態の授業である。」
(ウィキベディアより)
要約すると、タブレットなどのICT技術を利用して、
しっかりと予習して、教室での応用的な授業に臨むということになります。
http://kotobank.jp/word/ICT
まず、
肯定派の意見としては
教育の質が向上する、という点があがります。
具体的な事例として、
米国カーネギーメロン大学での統計学の授業で効果があった、
近畿大学付属高校では、英語の授業において予定より半年も早く学習を終えた、
など、輝かしい実績があります。
確かに子供たちに、彼らの興味を惹きつけるコンテンツが入ったタブレットを与えれば、テレビを見る代わりに、タブレットで予習をしてしまうことが期待できそうです。
これまで以上に子供が予習をしてくれれば、それは学習効果も上がるでしょう。
一方で、
否定側の意見はどうでしょう。
講師側の力量が大きくものをいうという意見が多く上がります。
これまで、教科書にのっとり授業をしていた先生に対し、
生徒一人ひとりの理解度に合わせた授業や議論を深めさせるため、ファシリテーションの能力が求められるというものです。
そうなると、現状の教職員では荷が重いし、先生による教育レベルの格差が大きくなるだろうということです。
思い出すのは、小学校の先生が持っていらっしゃった、赤い字の印刷が沢山はいった生徒用より少し厚い教科書です。
いわゆる教え方が書かれたアンチョコですね。
反転授業になると、個別対応になるので、より複雑なアンチョコが必要になるでしょうし、そもそもアンチョコだけではカバーでないでしょう。
そうなってしまうと、学習効果は上がらない可能性もあります。
さて、この問題は、
反転教育という言葉やタブレット、ICTといった言葉から、新しい問題のように感じてしまいますが、よくよく見てみると古くから教育現場で取り上げられている話題です。
肯定側の主張を論理的にシンプルに分解すると、
主張:学習効果が上がる
理由:予習をするから
証拠:大学や高校での事例
となります。
いかがでしょうか?
また、否定側の主張も同様に見ると
主張:教育の質にばらつきがでる
理由:先生の力量にばらつきがあるから
証拠:現状の職員のICTスキルやファシリテーション力のバラつき
となります。
このように、飾られた言葉を削ぎ落して、
ディベート力を駆使して論理的に見ていくと、問題の本質が見えてきます。
予習復習が大切なことは、寺子屋の時代から言われていますし、
先生によって教室の雰囲気や活気ががらりと変わるのも昔から変わりません。
(親も子供も新しい年の担任の先生が誰かが気になりますよね)
つまるところ、
子供が学びたくなる教材を提供し、
予習を促し、
教える側の力量も上げる、
家庭も地域も一丸となって支える、
こんな結論に落ち着きそうです。
変わるものと変わらないものを見極めるのも
大切なディベート力ですね。
では、ごきげんよう。