2014.1.23.(木)
井上晋の「賛否両論のための基礎知識」
第2回 「『特定秘密保護法』を解明してみる!」(2014年1月23日)
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第2回
身の引き締まる寒さが続いていますが、みなさん体調はいかがですか。
今回取り上げるテーマは、昨年末に大いに注目された、「特定秘密保護法」についてです。
可決直前ではかなりヒートアップしましたが、年が明けると忘却の彼方ですね。お正月直前に議決というのは政権の狙いでしょうか?
とても議論が多いテーマなので、今更ながら取り上げてみたいと思います。
ずばり「日本政府は、特定秘密保護法案を破棄すべし」
まずは、この法案についての基本知識からです。
この法案を見ていく際に欠かせないポイントが、日本版NSC (National Security Council)・国家安全保障会議の設置です。
日本版NSCとは、政府が外交と安全保障の司令塔として設置を目指している機関で、総理大臣、官房長官、外務大臣、防衛大臣の4名が定期的に情報を共有し方針を決めていこうというものです。
テロ組織や各国とのパワーバランスのなかで、重要になってくるのが情報なのですが、日本の情報だけでは貧弱なため、同盟国であるアメリカからの情報が重要になります。(また、情報は複数の情報を照らし合わせたほうが利用価値が上がるということもあるでしょう。)
そのアメリカからの情報をしっかりと受け取るためには、特定機密をしっかり守っているという法律が必要という訳です。
「あいつは口が堅いよね」と思われている人のところにはどんどん情報があつまり、「あいつは本当にお喋りだ」という人に対しては、だれも大切な相談をしなくなるのと似ています。
さてここで、「キャストライトアップ」です。
国という立場で見ると、同盟国のアメリカからの要求には応えたいですし、また、国民の生命と財産を守るためにも、高度な情報分析による安全保障対策が必要になります。昨今の中国や韓国との緊張感を考えると、情報戦においても万全を期す必要があります。そのためにも、「お喋りな国ではないです」と同胞に伝えられる基盤づくりは欠かせません。
一方で、国民の側から見るとどうでしょうか。
確かに、生命財産を守ってもらうことはうれしいのだけど、なんか都合の悪いことまで隠しているのではないか、それに、国をチェックする我々の「知る権利」が侵されているのではと思ってしまいます。
この不安の背景にあるのは、どこからどこまでが秘密情報なのかが不透明であったり、一定の期間を過ぎても公開されない情報が生まれる仕組みがあったりと、この法案の細部が、不完全なところにあるようです。(武器、弾薬など防衛の用に供する物など、7項目については無期限で秘密指定できる)
さて、ここからが思案のしどころです。
この論題は、いわゆる「総論賛成、各論反対」というタイプの議論に陥りやすい論題です。
組織が動く以上、なんでもオープンというわけにはいかず、何かしらの秘密は存在します。(企業でもそうでしょう)
そのことに真っ向から意義を唱えることは難しいともいえます。
しかしながら、
・どこからどこまでを機密とするのか、
・どの程度で公開するのか、
・機密といわれている情報かどうかを誰がチェックするのか、
といった各論になると、一気に反対意見が続出するわけです。
つまり、下手をするとこのディベートは、理念重視の法案推進側と各論での基準作りが大切な法案廃止側で、不幸な空中戦、いわゆる、かみ合わないディベートが進みます。
では、この混乱を紐解くものはというと、私は、納得感とか信頼感という、非常にエモーショナルな要素を取り入れるしかないのではと思っています。
線の引きどころが難しい問題に対して、でも線を引くには、
双方の信頼関係に頼るしかないからです。
不幸にも日本の政府や公の機関は、これまでに何度となく国民の信頼を裏切ってきた背景があります。
少し控えめなところに線を引き、信頼関係を構築し直すしかないのではないでしょうか。
では、ご機嫌よう。