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2016.3.26(土)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第43斬 「人工知能は感情を理解できるのか?」(2016年3月26日)

ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第43斬 「人工知能は感情を理解できるのか?」
つい先日のことですが、
韓国出身の囲碁世界チャンピオンであるイ・セドル九段が、
グーグルの系列会社が作ったAlphaGo(アルファ碁)というプログラムと戦って敗れました。
5番勝負で1勝4敗。アルファ碁の強さが際立った対戦でした。
囲碁は、盤のサイズが大きいため(19マス×19マス、ちなみに将棋は9マス×9マス)、
しらみつぶしに計算すると膨大な数を読まなくてはいけません。
したがって、コンピュータ・プログラムがプロ棋士に勝つまでには、
もう10年くらいかかると言われていました。
「ついに人口知能が人間を超えたか」と思わせる完勝劇となりました。

■アルファ碁の強さ
アルファ碁を開発した英ディープマインド社のデミス・ハサビスCEOは、
「インターネットから10万の棋譜を入力し、自己対局を3千万回やって学習した」
と勝因についてコメントしています。
つまり、従来の全組み合わせを高速演算するという手法ではなく、
アルファ碁はプロ棋譜を下敷きに”自己学習”するというアプローチで設計されています。
機械は”疲れない”ため、時間さえ与えられれば、
数千万回の自己対局をこなし、自己学習を繰り返すことができます。
また、テレビCMでもおなじみの人型ロボットのPEPPER(ペッパー)も、
「自己学習」という点で劣っていません。
会話の内容や相手の受け答えを、インターネット上に蓄積することで、
恒久的に「自己学習」していく仕組みを持っています。
しかも、世の中にある全ペッパーが収集した情報を「共有・集積」することができるので、
会話のバリエーションが”超短期間”のうちに、
”爆発的に”増えていく余地は十分にあります。
■人口知能の挑戦
実はペッパーには、ある特殊な機能が付いています。
それは「感情認識」ができるという仕組みです。
正確に言うと、会話する相手の、表情や声のトーンなどから、
喜怒哀楽のうち、相手がどの感情を持っているかを推論する機能です。
大量情報を高速処理するという、従来のパターン・マッチングから、
大きく一歩踏み出しているという点で、アルファ碁やペッパーなど人口知能は、
新しい挑戦に向かっていると言えるでしょう。
■機械に仕事を奪われる?!
そうなると、ふと気になるのが、
「機械に仕事を奪われないだろうか?」という心配。
2015年8月22日号の週刊ダイヤモンドの特集で、
「機械に奪われそうな仕事ランキング」が紹介されていました。
あくまでも米国におけるランキングとなりますが、
一位は小売店販売員、二位は会計士、三位は一般事務員と続きます。
米AP通信は、すでに決算記事の作成にロボット記者を導入しています。
一方、最も仕事を奪われにくいとされたのがセラピスト。
セラピストが扱うのは「人のココロ」。
結局、人の気持ちが一番複雑にできているということなのでしょう。
■感情をくみ取る
「コミュニケーション力とは、意味を的確につかみ、感情を理解し合う力である」
こう定義しているのは、コミュニケーション学の権威である明治大学・斉藤孝教授。
(現時点の)ペッパーの「感情認識」レベルでは。
作り笑顔や苦笑いは、単なる笑顔として認識されます。
目の奥に潜む「怒り」や「悲しみ」を見抜くことはできません。
本当に心から笑っているのか? 愛想笑いのレベルなのか?
はたまた、実は怒っているのか?
人工知能には大きな課題と言えます。
言い換えれば、「感情を理解し合う力」という点では、
まだまだ人間に分があるということ。
人類が存続し続ける限り、相手の感情を正確にくみ取る能力は、
普遍的に最重要なスキルであると言えそうです。

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