2013.12.28.(土)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第10斬 会議を利用して影響力をアップする(その1)(2013年12月28日)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」 第10斬
今日のターゲットは「会議を利用して影響力をアップする(その1)」。
皆様、こんにちは。
一年早いもので、もう年の瀬ですね。今年の年末は比較的長い連休を取得される方も多いと聞きます。是非、ゆっくりと休んで頂き、来年にむけた英気を養って頂きたいと思います。
さて、今回のコラムでは、ビジネスの現場においてかなりの時間を占める『会議』について、ネオ・ディベートとの関連性を見ていくことにします。『会議』って何か面倒なイメージがありませんか?大勢が集まって、延々と時間をかけて、結論ありきの議論を行う、みたいなネガティブな印象を持っている方も多いかと思います。もし『会議』の参加者の大半が、上記のようなネガティブな印象を持って参加しているとしたら、逆に影響力を発揮するチャンスと捉えるべきです。ネオ・ディベートのテクニックを駆使したちょっとした工夫をすることで、『会議』の場における、皆様の存在感・影響力を、格段にアップすることができるのです。実際、弊社の「使えるディベートセミナー」に参加される方の多くが、『会議』における生産性を高めたい、より有効な議論をしたい、と考え、受講理由の一つに挙げられています。そして、受講後のアンケートなどで、受講前より『会議』における立ち居振る舞いが大きく変わった、という感想を聞くことが多々あります。それだけ、ネオ・ディベートと会議の立ち回りは関係が深いということです!
それでは、早速掘り下げていきましょう。
皆様にまず考えて頂きたいのは、そもそも、『会議』は何のために行うのか?という点です。一人で完結する仕事の場合には、会議を行う必要はありません。複数(もしくは多数)の人間が関わるプロジェクトなどは、『会議』というコミュニケーションの場が必要となる局面が多いでしょう。
『会議』の目的はさまざまありますが、以下の2点に一般化します。
目的1)決めるべき事項について討議する
目的2)合意を取る
しかしながら、多くの会議では、物事が決まるどころか、問題点が発散したり、合意が取れず平行線を辿ることがしばしばです。
すったもんだしている間に、タイムアップとなり、具体的な成果がないまま、「また次回」ということになります。
『会議』がヨレてしまう阻害要因のうち、とりわけ致命的なものを挙げます。
阻害要因1)目指すべきゴールが設定されていない(結果:議論が発散)
阻害要因2)発言者のバランスが取れていない(結果:判断材料が揃わない)
阻害要因3)相手の立場を理解しようとしない(結果:合意できない)
ひとつずつ見ていきましょう。
まず、阻害要因1「目指すべきゴールが設定されていない」ですが、『会議』前の事前準備が大切になります。もし、皆様が主催者側であれば、会議の成果物として、何を目指すかを提示しなくてはなりません。もし、皆様が参加者側であれば、議長・推進役に対して、
「本日の会議のゴールはどこですか?」
「本日の会議で決めるべき事柄を教えて下さい」
のような形で問いかけると良いでしょう。ここが決まるだけで、会議がぐっと締まってきます。
なお、会議資料などに事前に目を通すことで、ある程度あたりはつくはずですから、
「本日の会議では、○△支店の移転作業における前提事項の確認と、問題点を洗い出すということで宜しいでしょうか?」
「本日の会議では、3ヵ月後に始まるキャンペーンの対象企業の選定と該当となった対象企業へのアプローチ方法について合意するという認識で間違っていませんか?」
のような形で、具体的に目的を絞ってしまうのもテです。
意図的もしくは無意識的に、ゴールを目指す方向から逸脱し、発散する参加者は必ずいます。
その場合には、以下のように巻き取ることで、他の参加者から感謝されます。
「○○さんが今挙げられた問題点は確かにありと思います。ただ、本日議論するべき事柄とは直接関係がないようですので、この打ち合わせの後、△△部長に相談に一緒に行きましょう。」
「○○さんのご指摘はごもっともです。大きい問題点だと認識しています。ただ、議論に必要なメンバーが揃っていないようですので、後日、別の打ち合わせを開催いたします。」
このように、『会議』でどの範囲まで議論するのかを設定することを、ネオ・ディベートでは『問題領域の設定』と呼びます。問題領域の設定』で有効なテクニックとしては、利害関係者をあぶりだす『キャストライトアップ』を使うことで、会議参加者にとって、重要な問題を取りあげることができます。
『キャストライトアップ』の詳細については、バーニングマインド・理事を務める太田龍樹の著書『ディベートの基本が面白いほど身につく本(中経出版)』を参考にしてみて下さい。
続いて、阻害要因2「発言者のバランスが取れていない」という点については、参加者の力関係が大きく影響します。
もし、皆様が主催者の立場になった場合は、なるべく発言機会を均等にするよう心がけて下さい。
上記に挙げた書籍『ディベートの基本が面白いほど身につく本(中経出版)』の中で、ネオ・ディベートのルールとして以下の3つを設定しています。
ルール1)時間制限を設ける
ルール2)主張するなら理由を述べる
ルール3)意見と人格を切り離す
限られた時間を有効に使う、発言機会を均等にするという意味では、ルール1「時間制限を設ける」という点が大きく意味をもちます。つまり、立場が異なるパーティー(参加者グループ)ごとに、決められた時間の中で、主張をしてもらうというやり方です。もちろん、きっちり3分とか5分で区切れということではなく、ある程度、公平性が保たれた中で、会議の参加者の意見・主張を全て汲み取る、という意味で捉えて下さい。もし、主張・発言する機会を与えられないまま会議が終わってしまうと、致命的な問題点や課題などが発覚するのが遅れたり、そもそもの前提条件が満たされていないことが後で分かるなどの、後戻り的な混乱が生じてしまうからです。参加者、とりわけ利害関係者のそれぞれの立場で、後だしジャンケンが起こるのを避けるだけで、相当の無駄を避けることができます。
続いて、大切なのがルール2「主張するなら理由を述べる」です。とりわけ多いのが、理由なき「賛成」「反対」が挙げられます。「賛成」「反対」いずれにしても、必ず理由をつけて発言をしてもらうことで、意見が衝突した際に、対立を緩和する材料になります。例を挙げましょう。
「女性向け市場の開拓に経営資源を集中するか否か?」という議題に対して、賛成・反対意見として、以下のようなものがあったとします。
参加者A
「賛成です。理由は女性の方がお金を使うから(消費性向が高い)」
参加者B
「反対です。理由は社員の男性比率が多く、女性向けのマーケットを理解していない」
このような対立が起こった場合でも、理由が示されていることで、
・女性の消費性向が高いというのは本当か? 客観的な数字(データ)の裏付けがあるか?
・女性の消費性向が高いと仮定した場合、どんなものを買っているのか?
・男性比率が高いとしても、外部のリサーチ会社の協力を得ることで、プロジェクトを推進することができるか? コンサル料はどのぐらいかかるのか?
というような形で、次のステップに向けた建設的な議論に進んでいけます。平行線を辿らない、という意味で、理由をしっかりとつけるということは重要です。
最後に、ルール3「意見と人格を切り離す」というルールもとても重要です。重役の○△さんが言っているから正しい、とむやみやたらに信じてしまう問題点は誰もが理解できるところです。ただし、実際のビジネスシーンでは、偉い人が言っているからという理由で、ロクな検証も行わず合意形成をしてしまうケースは多々あります。ネオ・ディベートでは、誰が言ったかではなく、何を言ったかに重きをおきます。主張の中身を客観的な視点で吟味する、という姿勢が大切でしょう。このように、阻害要因2「発言者のバランスがとれていない」という状況は、どの企業、どの会議体でも容易に発生しうる落とし穴です。ネオ・ディベートのルールに基づいて議論することで、このような落とし穴を回避し、真に生産的な議論を行うことができます。
『会議』を非効率なものにしてしまう、阻害要因3「相手の立場を理解しようとしない」については、利害関係が絡む非常に複雑な問題になりますので、次回コラムで詳しく掘り下げてまいります。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。また来年も、バーニングマインドを宜しくお願い致します!それでは、皆様良いお年をお迎え下さいませ!!
以上、オクヤマから魂を込めて。