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2016.10.17(月)
アビコ青年のディベート事件簿
File50「出来そうで出来ない…相手の立場を思いやる」(2016年10月17日)

ほぼ月イチコラム アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file 50
本日のテーマは「出来そうで出来ない…相手の立場を思いやる」です。

■松岡修造と、芸人・ヒロシ
先日、旅先の宿でトイレに入った時のこと。
目の前には日めくりカレンダーが2つありました。
一つは、松岡修造さんの「まいにち、修造!」。
もう一つは、芸人・ヒロシさんの「まいにち、ネガティブ。」
「まいにち、修造!」、まさにポジティブ・ワードの連続。
痛々しいほどに作り笑いの修造さんの写真に添えられた言葉は、
「苦しい時ほど、笑ってごらん」
対して、ヒロシさんはその真逆。
やはりというか、修造さんとは物事の捉え方が正反対。
「『苦しいときほど笑え!』
笑えるくらいなら、とっくに笑っています。」
肯定・否定。まさにディベート。
日常は、ディベートに溢れています。

■「相手の視点に立つ」難しさ
二つの日めくりカレンダーの言葉は、
どちらも正しく、どちらも真理を突いています。
この事例に限らず、物事には常に2つ以上の捉え方があります。
だからこそ、一面的な見方(思い込み)は危険。
これまた先日、とある料理店でのこと。
お店のご主人が、厨房で修行中と思われるお弟子さんを指導する姿が印象的でした。
ネガティブなイメージとして。
「何度言ったら分かるんだ!
 こんなことで、お客さんに出せる料理が作れるのか!」
「馬鹿かお前は!一体いつになったらできるんだよ!」
「ふざけるな!お前なんか辞めちまえ!」
・・・と、そんなやり取りが、
客の見えるところで延々と繰り広げられたのです。
正直、辟易しました。
どんなにご主人の言っていることが正しいとはいえ、
それを人前で、しかも客席の空気まで張り詰めるような指導は、
「お客のため」の指導とは言えません。
むしろ、お客を大切に思うのなら、
ご主人こそ食事の雰囲気を壊している張本人であることに気付くべきです。
人のためを思い、相手の立場に立つとは、
頭で分かっていても、実際にはできていないケースが多いと実感します。

■人心掌握術の達人、田中角栄
そんな折、思い出すのが故・田中角栄元首相です。
没後23年、あと2年で生誕100年を迎えるため、
改めて注目が集まりつつあります。
その評価は賛否両論に分かれますが、
「人心掌握術に長けた人物」であったことは間違いありません。
角栄氏は、人の感情に対する想像力に人一倍長けていました。
「人はどんな時に、何をされたら嬉しいのか」、
本能的に知り、即行動に移せる人でした。
例えば、葬儀には真っ先に駆けつけました。
冠婚葬祭を大切にする政治家は多いですが、角栄氏は中でも「葬儀」を重視しました。
「祝い事は少々遅れても、祝意が伝わればいい。相手もお祝いで気持ちが満たされている。
しかし、葬儀は急に訪れることも多く、遺族は強い喪失感の真っただ中にある。
その気持ちにこそ寄り添うべきだ。」という信念がありました。
それだけではありません。花は2回贈りました。
1回目は葬儀の時。2回目は初七日を迎える頃。
葬儀の忙しさもひと段落すれば、再び遺族の悲しみがこみ上げるはず。
その気持ちに寄り添い、初七日の時期に、
「最初のお花がしおれた頃でしょう。新しいお花と代えて下さい」と、
メッセージを添えてお花を贈ったそうです。
そんなエピソードは、枚挙に暇がありません。
一貫しているのは、純粋な共感を素直に態度で示せること。
自分を分かってもらうより、相手を分かることを最優先する。
だからこそ、角栄氏はどんな人の陳情にも自ら応対しました。
官僚たち一人ひとりにも関心を持ち、
官僚の経歴、家族構成、生年月日、入省年度まで全て暗記していたそうです。
自分たちの存在を認め、話をしっかり聞く角栄氏に、
官僚たちの協力体制も強固になっていきました。

■「話す」と「聞く」は表裏一体
独善的な思いをまくしたてられても、人の心は動きません。
当然、相手の行動も変えられません。
なぜなら、相手も感情を持った人間だからです。
その点を踏まえれば、
コミュニケーションの基本は「話をする(発信)」より先に、
「話を聞く(受信)」があって初めて成立するものと言えます。
そして、ただ話を聞くだけではなく、
心から相手に共感できるからこそ、相手も心を開いてくれます。
角栄氏の言葉が多くの人の心に響いたのも、
言葉を発する前に、数多の人々の声を「聞いて、聞いて、聞きまくった」からに他なりません。
つまり、「相手の立場に立つ」出発点とは、
「相手の話を、心から興味を持って聞くこと」から始まるといえます。
この姿勢は、弊社・使えるディベートセミナーの哲学にも通じます。
心に響くコミュニケーションとは何か?
日常の中に、歴史の中に、そのヒントは散りばめられています。
アンテナを高く持ち、今後も研究を重ねていこうと思う今日この頃です。

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以上、アビコレポートでした。

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