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2016.7.15(金)
アビコ青年のディベート事件簿
File47「歴史のリアルに触れる意味」(2016年7月15日)

ほぼ月イチコラム アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file 47

本日のテーマは「歴史のリアルに触れる意味」です。

■小笠原諸島・父島で感じた違和感
今年のGW、小笠原諸島・父島に行きました。
目的は大自然に直接触れること。
特に、ダイビングで自分よりも大きな生物と
至近距離で相対する瞬間は大きな感動を覚えます。
そんな日常生活からかけ離れた世界が、そこにはあります。
ですが、父島に来るたびに、
いや、ダイビングをするたびに感じる違和感がありました。
それは、戦時中の沈没船を目の前で見ることが多いのです。
沈船の多くは日本船籍で、ダイビングスポット名も「○○丸」。
今では魚たちの憩いの場ですが、
70年以上前、そこにはたくさんの日本人が、
自らの命と国の命運を賭けて戦った事実があります。
その現実を思うと、目の前の魚を見ても、
「魚、キレイ」だけでは心を満たせない違和感を覚えます。
確かにここで、人が死んだのですから。

■リアルには、物言わぬパトスが宿る
そこで、現地の戦跡ツアーに参加してみました。
「これが現実…。」
そう思わされる遺構や遺品が、まさに山のように遺されていました。
島周辺の岸壁にある、旧日本軍が掘った無数の監視用の豪。
周辺海域を警備する役割を担う。
父島の道路は、そのほとんどが戦時中に日本軍が作った道。
戦後になって、ただ道を拡張しただけ。
山に入れば、そこはまさに要塞。
島内に点在する、かつての弾薬庫。今なお自衛隊の倉庫として現役。
山の見晴らしが良い場所=監視所。
大砲を設置して、要所を守る役目を果たしていた。
山頂付近は対空砲を設置。
斜面の至るところに掘られた洞窟。
その暗闇に向かって、物資輸送用トロッコの線路が果てしなく伸びる。
懐中電灯を照らし、闇と湿気の中を突き進むと、
その奥に一筋の光が射し込む。
砲撃用の穴があり、今なお大砲が遺る。
大砲がその先に見据えるのは、かつて重要な海域を通った旧・米軍艦。
山中には無数の空瓶が転がっている。
日本兵が使用した生活備品が、今なお遺る。
瓶の文字を見ると、大日本ビールと書かれている。
アサヒビールとサッポロビールの前身。
過酷な環境下で、一時の休息を得たのだろう。
一緒に転がる食器には、マークが描かれている。
星は陸軍。錨(いかり)は海軍のもの。
貴重な遺品だが、軍事マニアの窃盗が後を絶たないという。
なぜここまで父島は要塞化したのか?
日本にとって重要な軍事拠点であったのは言うまでもないが、
その一つに硫黄島との関係がある。
硫黄島と本土は、当時の技術では直接通信できなかったため、
その中継地点として父島の通信所が存在していたとのこと。
ちなみに、当時の通信所は、現在NTTが使用している。
当時のアメリカにとっては、米国本土と日本の中継基地として
硫黄島さえ押さえられれば良かった。
そのため、父島での上陸戦はなかったとのこと
。 しかし、のちにアメリカは、父島が鉄壁の守りを敷いていたことを知り、
愕然としたとのこと。
歴史の教科書で、かつて展開された壮絶な戦争は知っていました。
しかしながら、目に飛び込んでくる遺構・遺物の数々に、
圧倒的なリアルを感じました。
教科書の文字からは想像できない戦争の現実が、
理屈を超えて感情に強く訴えてきました。

■“平和を守る道”で二分する日本
参院選を目前に控え、与野党が最後の演説を繰り広げています。
手段は違えど、日本の平和を守りたい、その思いは同じはずです。
では、平和を守れるのは、武力を行使できる国なのか?
それとも、隣国の良心を期待した現憲法を守り、
軍隊を放棄する理想を追い求めることなのか?
ほとんどの国民がリアルな戦争体験を持たない中で議論しています。
だからこそ、書物や映像で歴史を学ぶのは重要です。
それと同時に、やはり戦争の爪痕に直接触れる(見る。聞く、感じる)ことも、
それと同じか、もしくはそれ以上に重要なことに感じます。
なぜなら、自分事として考えるきっかけになるからです。
リアリティのない物事は、どうしても他人事に思えてしまうからです。
争点は戦争以外にもありますが、
少しでも多くの争点を自分事とする国民が増えれば、
投票率が伸びることは言うまでもありません。

■大自然と歴史の息づく島、父島
今ある穏やかな海。今ある美しい景色。
その全ては、かつて想像を絶する戦争を経て、今ここにありました。
これからも、この素晴らしい自然を守り続けるためにも、
戦争の記憶を受け継いでいく方法が必要と感じます。
その一つに、小笠原への旅は最高の経験を与えてくれました。
ロゴスとともに、パトスにも深く訴えかけてくる貴重な体験。
その機会が、ここにはあります。
船で片道24時間の酔狂な旅ですが、
一生に一度はこの島に訪れることをお勧めします。

※写真について
1枚目、小笠原・南島。一日100人までの入島制限がある世界自然遺産。
2枚目、3枚目。父島周辺の岸壁に掘られた警備用の窓。ここから射撃。
4枚目。父島・境浦の沈没船「濵江丸(ひんこうまる)」。当時の輸送船。米軍の空爆を受け、70年前に現在の場所に座礁。
5枚目、父島山中にある洞窟。トロッコの線路が伸びる。 6枚目、7枚目。今なお残る大砲。 小笠原・南島。一日100人までの入島制限がある世界自然遺産 父島周辺の岸壁に掘られた警備用の窓1 父島周辺の岸壁に掘られた警備用の窓2 父島・境浦の沈没船「濵江丸(ひんこうまる)」。当時の輸送船。米軍の空爆を受け、70年前に現在の場所に座礁 父島山中にある洞窟。トロッコの線路が伸びる 今なお残る大砲1 今なお残る大砲2
以上

※お知らせ 第18期『使えるディベートセミナー』の受講生募集中です。
2016年8月28日(日)スタートです。皆さんの人生を切り開ける武器を、一緒に学んでみませんか?
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以上、アビコレポートでした。

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