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2018.5.3(木)
第58回 「数字・ファクト・ロジック」(2018年5月3日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第57回

今回のテーマは、情報の蟻地獄についてです。

「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。」

共和制ローマの政治家であり軍人であった、ユリウス・カエサルが『ガリア戦記』にこう残したのは2000年も前の話ですが、情報が溢れる現在においてこの傾向はますます顕著になっているように思います。

改竄、隠蔽、忖度、セクハラなどなど、ちょっと信じられないような事件が連日起こっているのですが、①「絶対に自民党がいい」という人が3割、②「絶対に自民党がいや」という人が2割、というこの大きな区分は変わっていないようです。

①番のグループに所属する人の意見は、

「官僚や公務員の不手際まったくもって困ったものでだらしない限りだが、安倍晋三首相が関与したという決定的な事実は何一つない。部下のミスで政権がいちいち責任をとっていたら、官僚が政権を飛ばすことだってできる。そんな馬鹿な話があってはいけない。そもそも、これだけのスクープが出てくるのは、官僚の逆恨みによる反逆かもしれないし、美人局によるマッチポンプの可能性だってないとは言えない。それより何よりも、経済は好調だし、今の野党はもっと情けない結果になる。だから、このまま、安倍首相に続投してもらうのが一番だ。」

一方②番のグループに所属する人の意見は、

「モリカケ問題は、明らかに安倍首相や明恵夫人の圧力によるものということは火を見るよりも明らか。どう見たって、お友達に優遇している。大体において、教育勅語を暗唱させる学校なんて時代錯誤も甚だしい。それに、公文書の改ざんや隠蔽は民主主義の根幹にかかわる由々しき事態だ。粉飾決算がされれば、トップの指示であろうと部門長の独断であろうと、トップは間違いなく辞任になる。こんなことは常識だ。とにかく、これまで風向きが悪くなる度に殊勝な態度をとって反省風を装っている官邸は信用ならない。」

これだけの情報社会で、どのような情報でも手に入りそうなものなのに、
①の人々は、好んで陰謀説や野党幹部のルーツの問題、問題の土地が部落であった問題などなどの情報を集めては提示しています。

②の人々は、首相周辺の縁故知人の情報、いつどこで会っていたか、重要な言葉を言った言わないの情報を探し求め続けているようです。

そして、探して読めば読むほど、ますます自身の考え信条に自信を深めていく。
SNSからの情報にしても、入口時点で自分好みの選別をしている時点で、自分が心地よい、信じやすい、安心する情報であふれかえることになる。

なんとなくの想像だが、先の大統領選の米国もこんな空気だったのではないでしょうか。それこそ、こんな空気のところに、フェイクニュースなど飛び込んで来ようものならイチコロで騙されてしまうはずです。

カエサルのいう人間の特性が正しいなら、情報社会は人々をますます偏狭にしていく社会という、悲しい結論になってしまいます。
その結果は、現在のアメリカのような分断された社会という国の根幹を揺るがすことにもつながるでしょう。

情報を集めれば集めるほど自らが偏狭な世界に落ちていくというこの蟻地獄から抜け出すにはどうしたらよいのでしょうか。

ライフネット生命保険の代表取締役会長 出口治明さんは、
「タテ・ヨコ思考」の重要性と「数字・ファクト・ロジック」の重要性を説いています。
人間の脳は、1万3000年以上前から進化していないそうです。だから、昔の人がどう考えたのかを見ることが大切だそうです。つまり、ここでのタテ軸とは歴史です。
今の日本の政治を見るには、政治の腐敗と改善を繰り返してきたローマ史は参考になるかもしれませんし、エリート官僚の選抜システムである科挙について考察が役に立つかもしれません。

ヨコとは、「世界ではどうか」という視点ということです。
今回のセクハラ問題について言うならば、「被害者女性にも問題があった。」「官邸への取材は、男性だけにすればいい。」という意見は、世界的に見てもどれだけレベルの低い話をしているのかが明らかです。

「数字・ファクト・ロジック」は言うまでもなくディベートの世界です。
現野党の主張は、残念ながらこのファクトを問題と結びつけるロジックが貧弱すぎてどうしても感情・感覚論に聞こえてしまいます。

悲しいことですが、①の側の人、②の側の人ともに、自らが入り込んだ偏狭な情報の蟻地獄から抜け出すことは難しいと思います。
しかし、幸いにも残りの5割の人はまだ、柔軟に情報を咀嚼できる状況にあるはずです。

その為の武器、ディベートできる力を身に着けなければなりません。

皆さんは、どう思いますか


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