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2017.6.21(水)
第49回 「小池知事の豊洲・築地の解」(2017年6月21日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第49回

東京都の小池知事が記者会見で使ったことで『アウフヘーベン』という言葉が脚光を浴びています。
論理学やディベートを勉強してきた人であれば、馴染み深い言葉ですが、一般には認知度の低い言葉でしょう。
アウフヘーベンとは、とある命題が「否定」を通じて、新しく、かつより高次のモノやコトへと再生成される現象をさします。
小池知事の利用した文脈でいえば、
「築地か豊洲の二者択一ではなく、より新しくかつ高い次元で都民が納得できる第三の解決策を目指す。」といった意味合いでしょう。
そういった意味では、政治家の役割を真正面から実行しているように思えます。
今回は、この『アウフヘーベン』を紐解きながら、小池知事の豊洲・築地の解に迫ってみたいと思います。
アウフヘーベンは、相容れない2つの立場を両立させるのですから、何かしらの進化が無いと成り立ちません。
私が考えるにその進化には、「技術」と「心」という2つの進化があると思います。
技術の進化は、分かりやすいものです。
たとえば、
ネット 販売は便利だ。
ネット販売が増えすぎると物流がパンクする。
という相反する立場に対して、
宅配ボックスを増やす。
とか、ドローンを使った無人配達を行う。
といった技術的な解決策があげられます。
また、これはネットで見つけた例ですが、
花は美しい
花は枯れる
に対し
造花は美しく枯れない
というのも、技術的な進化としては正しいといえます。
(最近の造花は本当にきれいです)
さて、一方で、心の進化によるアウフヘーベンとはなんでしょうか。
それは、価値観を変えること、より高い視座を持つこと、より深い洞察力を持つことによる問題の解決と私は考えています。
僕はお母さんが好きだ。
だけどお母さんとは結婚できない。
という相容れない問題の解決には、
子供の親離れ、精神的な自立という成長が必要になります。
「お母さんにそっくりな彼女を見つける」や、「彼女にお母さんの役割を求める」という方法は、精神的に未熟なままであるという問題の本質をごまかしたままの解決策なので、すぐに破綻する事は想像に難く無いでしょう。もちろんこれは、アウフヘーベンでもなんでもありません。
先ほどの花の例を心の成長で解決するとどうなるでしょうか?
花は美しい
花は枯れる
美しい花は枯れて実を残す
見た目の美醜という価値観を超えて、世代をつなぐという生物の生き様に価値を見出しています。精神性の高まりが、2つの相容れない様を共に受け入れて昇華しており、造花の解決策とは大きな違いが分かると思います。
さて、本題に戻ります。
小池知事が出した『築地は守る、豊洲は活かす』という解は現状の相容れない問題をアウフヘーベンさせたものでしょうか?
私が考えるアウフヘーベンの要件である、技術的な進歩はあるでしょうか?
会見の中で、ITを活用するとありましたが、それは市場としての物流効率を高めるためのプランで、2つの市場を残すというプランを後押しする技術的な革新ではありません。たとえば、2つの市場は近いので、自動運転車と専用道路でつないで実質的には1つの市場としての機能させる事などが実現できれば、技術的な進歩によるアウフヘーベンと言えるでしょう。
心の進歩はどうでしょうか?
安心、安全、歴史といった価値観で対立していた問題に対して、精神的に都民や関係者を高められる価値観は、提供されているとは思えません。
食のテーマパークを作るというのも、活用方法のプランであって新しい価値観の提案とは言えません。
「地産地消を進める。」
「東京へすべての一流食材を集めること自体を見直す。」
といった思考のパラダイムシフトから市場の位置づけを見直すことが必要であったかもしれません。
こう考えると、『築地は守る、豊洲は活かす』の方針は、言葉の響きは素敵ですがどっちつかずの折衷案でしかありません。
「お母さんが好き」の例ではありませんが、問題の根本的な解決を先延ばしにしたプランは後々に禍根を残すことになります。
皆さんはどう思いますか。

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