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2015.12.28(月)
アビコ青年のディベート事件簿
File40「自分自身で考えることの大切さ」(2015年12月28日)

ほぼ月イチコラム アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file 40
本日のテーマは「自分自身で考えることの大切さ」です。
■無知は幸福?
予備校時代の恩師、代ゼミ・富田一彦先生の言葉は今でも忘れません。
当時、先生の単科講座を紹介するパンフレットには次の言葉がありました。
「Ignorance is bliss.
確かに今の時代、無知は幸福への道だ。
理屈はわからずともボタンを押せば勝手に機械は動き、
生きていくのに不自由はない。
疑問さえ持たなければ自らの置かれた隷属的立場に気づくことも、
それに屈辱を感じることもない。まさに、『知らぬが仏』である。
『知る』ということは、そのような幸福な隷属からの解放であり、
幸福な無知を享受する人々との決別を意味する。
君にその覚悟はあるのか。Yesならば、私は君を歓迎しよう。」
学ばなくても生きてはいける。
でも、学ばなければ今ある自分も環境も変えられない。
そんなインパクトのある深い言葉でした。
■ハンナ・アーレント「思考し続けることの大切さ」
歴史を振り返れば、「Ignorance is NOT bliss.」であることを感じます。
ナチス・ドイツの役人、アドルフ・アイヒマン。
ホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)が行われた当時、
彼は数百万のユダヤ人を強制収容所へ移送する指導的立場でした。
その結果、戦後の裁判では戦争責任を問われ、絞首刑となります。
この裁判を傍聴席で取材していたのが、政治哲学者・ハンナ・アーレント。
1963年、彼女は裁判のレポートをザ・ニューヨーカー誌に連載し、
全米で激しい論争を巻き起こします。
彼女は「悪の凡庸さ」― つまり、ユダヤ人大量虐殺を遂行したのは、
根っからの悪魔のような人間ではなく、「自ら考えることを放棄」して、
一人の小役人として淡々と業務をこなした結果なのだ、と述べたのです。
当時はアイヒマン擁護と誤解されて、多くの批判にさらされました。
ですが、彼女の言う通り、思考を止めれば人間は誰しも
アイヒマンのようなことをしでかすかもしれません。
だからこそ、自ら思考し続けることが大切なのだと警鐘を鳴らしたのです。
彼女は言います。
「人間と非人間を分け隔てるのは、思考することである」と。
■思考する役人・杉原千畝(すぎはら・ちうね)
同時代、アイヒマンと対極にある人物がいました。
当時、外務省・外務官であった杉原千畝です。
リトアニアの領事館に駐在していた杉原は、
ビザ(通過査証)を求めて領事館に押し寄せるユダヤ系難民を前に苦悩します。
ビザを発給してやりたい。
でも、本国(日本)からは発給を禁じる通達がきた。
従わなければ、自分も全てを失うかもしれない。
しかし、発給しなければ目の前のユダヤ人はいずれ殺される…。
葛藤の末、杉原は外務省からの指示を無視して大量のビザを発給。
およそ6,000人にのぼる避難民を救いました。
現在、その子孫は40,000人を越えると言われています。
役人としての職責と、一個人としての思い。
どちらを優先しても「間違い」ではありません。
ですが、一方を優先すれば、もう一方は失います。
アイヒマンのように思考を放棄すれば、杉原は楽だったかもしれません。
でも、自らの頭で考える杉原は苦悩します。
苦悩の末に下した決断を後押ししたもの。
それは、杉原が結局、何を大切にすべきと考えたのか、
いわば自分の守るべき「哲学」に立ち返った結果でした。
「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬよう」
※かつて杉原が通ったハルビン学院の創設者・後藤新平が制定した
同校のモットー「自治三訣」
かつての母校が掲げ、自らも大切にした教訓を胸に、
あの大戦中の日本にあって、人道的な立場を貫きました。
1985年、イスラエル政府から杉原は「諸国民の中の正義の人賞」を贈られます。
日本人でこの称号を贈られた人物は、今日まで杉原千畝、ただ1人です。
■正解のない世の中を生き抜くには
仕事も人生も、正解のない問題は限りなく存在します。
ですが、自ら考え、問題の本質を見抜き、心から信じられる哲学があれば、
人生を切り開く貴重な羅針盤になってくれます。
その力を鍛える上で、ディベートの勉強は大いに役立ちます。
真っ向から対立する2つの立場を理解した上で、
それでも自分の主張が正しいと訴えるために必要なこと。
それこそが「本質を見抜き、哲学をもって考える力」だからです。

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以上、アビコレポートでした。

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